銀魔剣
□7【夕暮れの夢幻(ゆめまぼろし)】
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7【夕暮れの夢幻(ゆめまぼろし)】
[otherSide]
鈍い痛みの残る頭を押さえ、地に着いた右手は、知らずに砂利を握り込む。
揺れる視界に映るのは、竹刀を綺麗に振り回す、公希と由宇の姿。
「――亜子と、要……?」
思わず声に出た名前に、戸惑った。
(え?…知らない名前…だよな?)
自分で発した言葉だが、さっぱり心当たりはない。
しかし、視線は公希と由宇から外すことができないでいる。
(何か…懐かしい…?)
暖かく、安らぐ気配が、心を満たしていくのを感じる。
胸が、早鐘を打つように高鳴っていた。
視界が涙で滲んでいく。
(…この感情は何だ?)
初めての感覚。
暖かくて、心地良い。
しかしそれと同じくらい、寂しくて苦しい。
(何だろう…)
なぜ、二人を見ているだけで、こんなにも切なさを感じるのだろうか。
(…ああ、本当に…)
こんな気持ちを、以前にも感じたことがある。
あれは、いつ?
ニ人は、誰?
何か、大事なことを忘れているような気がする。
そう、あれは、ずっと昔の…。