ゲーム日記

□ラダトーム
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「ごめんなさい、ごめんなさい…っ!」
「……」
崩れ落ちて泣くカイに、ソルの瞳の色が変化した。シーツを掴んでいる手にそっと触れて外させ、しゃくり上げる華奢な身体を優しく抱き締めてやった。真面目なカイが考える事など手に取るように解る。頑なにソルを拒絶する理由も。だが、敢えてソルは彼の核心を衝いた。
「何で馬鹿を倒せと言わねェ?アリアハンでは言ってたじゃねェか」
「私の…ただの我が儘だから…。ソルはもうバラモスを倒して…勇者としての使命を果たしてる。ゾーマを倒す義務はソルには無いよ。…痛!」
ゆっくりと言葉を吐き出すカイの耳をソルが噛んだ。驚くカイの目の前には、赤茶の瞳の穏やかなソルがいた。ドクンと高鳴る胸を押さえ、カイは必死に平静を保つ。
「坊やにも義務は無ェだろ。それでも、自分であの馬鹿を倒すと決めたのなら、好きにしろ。俺も好きに坊やについて行く」
「な……っ!」
「自分の好きに動くだけだろうが。文句を言うな」
ピシャリと言い切られ、カイは言葉に詰まった。
「……でも…」
結局同じ鞘に戻る事になってしまう。それでは意味が無い。そんな彼の思考もソルは読んでいた。
「俺は坊やについて行くだけで何もしねェからな。魔物からも護らねェし、行き先も口出ししねェ」
「……それだったら、別に一緒に行動する意味は……」
「あ?夜の相手まで放棄する気か、テメェは?」
「はあ?何を言うんだ?今までだって……」
そこまで口にして、カイはハッと気が付いた。今までとこれからは違う。褒美としてソルはカイを抱いた。その時にソルは「バラモスとの引き換えは要らない」と言った。その言葉の意味は――
「お前を手に入れる為にバラモスをぶちのめしてやったんだぜ、カイ?お預けを喰らったロマリアからずっと目の前で我慢させておいて、たった一回で満足するとでも思ったか?これから毎晩お前を抱いて……」
「馬鹿――――――ッ!!!」
「おぁ!」
必死に力を振り絞ったカイの拳がソルの顔面を捉えた。入った。と、驚くカイの目に、穏やかに笑うソルが映った。笑って赦す。その優しさに、カイの内から再び熱いものが込み上げ、涙となって溢れ出た。
「お前と言う奴は……本当に、馬鹿だ…!」
「あぁ、そうだな」
「ソルっ!」
カイが腕を伸ばして縋り付いてきた。ソルはそっと彼の身体を抱き締め、触れるだけの優しいキスを落とした。だが、カイの身体は限界を訴え、快楽に向けて走り出した。それに気付いたソルは華奢な身体を押し倒し、手早く服を剥ぎ取った。そして、精を吐き出し濡れてしまったズボンを下着ごと引き摺り下ろし、濡れそぼっているカイの自身へと手を伸ばした。
「あ……触るなッ!」
「大丈夫だ、全部出しちまえば楽になる」
「い、嫌だ……見るな」
制止の声を上げるだけでも辛いはずだが、カイは羞恥に顔を歪めて、ソルの腕の中から逃げ出そうとしていた。だが、追い上げられる快感に、彼の意思に反して腰が揺れた。そして、上がる甘い喘ぎ。
「……ヤベェ」
嬌声を上げて果てたカイが男の熱い息を聞いたのかどうか。
「ん……や、み、見るな……見ないで」
だが、とうとうカイが哀願した。果てても衰えない欲にカイは恥じ入り、そして怯えた。そんな彼の様子に、どうにかソルは我に返った。あと一歩で理性が吹き飛び、自慢の自制心の名が泣くところだ。人間としては立派だが、男としては辛い。
「あ、あっ、嫌だ…ソル、やめて」
「カイ、昨日の晩を覚えてるか?昨日も何度もイっただろ」
「ん……んん、そう…イった」
「今日は昨日よりも少し気持ちいいだけだ。俺を感じて、お前も楽しめよ」
優しい口づけを落とすと、ソルは自らの熱く滾っている自身を取り出し、慣らした秘部へと宛がった。その大きな感触に慄き、カイが身体を強張らせた。昨夜の身体を貫く痛みを思い出したのだ。
「力を抜いて、ゆっくり息を吐け」
「あ……ま、待って……あ!く、うぅ……ッ!」
「息吐け、怪我するぞ」
そう言われたところで、カイは痛みを堪えるのでやっとだ。生理的な涙を浮かべ、頭を振って痛みを訴えた。ソルは挿入をそこでやめ、カイに優しく口づけた。涙に濡れた紺碧の瞳が開き、見上げてくる。フッと笑みを浮かべると、恥ずかしそうに頬を染めた。そんな彼に再び顔を近付けると、素直に瞳を閉じた。深く口づけながら、ソルはカイの下肢へと手を伸ばした。痛みで萎えてしまっている自身を握り込み、巧みに扱いた。与えられる快感に力が緩んだ時を見計らいながら、ソルは傷付ける事無くゆっくりとカイの中へと入っていった。
「は、ぁ…」
熱い溜め息を吐き、カイがソルを見上げた。腰を動かすと、カイの顔が快楽に蕩けた。だが、懸命に理性を手放さず、ソルを見上げてくる。
「?」
何か言いたいのだろうか。ソルはカイを抱き上げ、向かい合った。すると、嬉しそうに腕を首に巻いて、抱き付いてきた。そんな彼の背を撫でてやりながら、そっとカイの口元に耳を寄せてやった。熱い吐息と共に口に出した言葉。ソルの理性を飛ばすには充分だった。
「テメェ、優しく抱かれるのが嫌なら、最初からそう言え。泣き叫ぼうが、もう知ったこっちゃねェぞ」
「ふふ、馬鹿……あっ!」
動き出したソルから与えられる快楽に、カイはすぐに何も考えられなくなった。何度もソルの腕の中で弾け、ソルもカイの中へ何度も欲を吐き出した。



そして、夜が明けた。

この地底では夜が明けても夜だが。






窓の外を見ても真っ暗で、今が何時なのか判らない。足腰に加え、脚と腕の付け根も痛い。そして、喉も。ソルが満足するまで抱かれたのだ。それでも、カイの事を想って決して自分本位ではなく。
「…?」
カイは首を巡らし、部屋にソルが居ない事に気付いた。気配を追おうにも、カイではソルの気配に気付く事すら難しい。ソルの荷物も見当たらない。嫌な予感がした。
「……置いて行かれた?まさか、一人で行ったんじゃ……?」
カイは痛む身体に鞭打ち、荷物の中から着替えを出し、勢い良く扉を開けた。瞬間、目の前にいた人にぶつかりそうになった。
「うわ、すみません!」
「ッと、危ねェな。おい、そんな慌ててどこに行く気だ?」
「……え?」
腕を引かれて見上げると、ソルがいた。荷物を肩から下げ、食事の乗ったトレーを持っている。
「ソル、良かった」
ホッと安堵の息を吐き、カイが嬉しそうに笑った。それだけで先程の彼の慌てた様子に気付き、安心させるようにそっと額に口づけ、彼を部屋の中へ戻す。
「それだけ走り回れりゃ大丈夫だろうが、吐き気はないか?頭痛は?眩暈は?どこかに痺れは?」
「ん、大丈夫」
目と口の中を覗き込み、ソルはカイの額に手を置いて熱を測る。
「何?どうして…?」
「初めて使われるには、かなりキツイ薬だったんだ。後遺症が残ると厄介だからな。ま、大丈夫だろ」
「……荷物まで持って、何処に行っていたんだ?」
「買出し。要らねェもんを売った金で、煙草と酒と、……ゴムも大量に要るだろ?」
殊更最後を強調してニヤリと笑う勇者にカイの鉄拳が飛んだ。
「馬鹿!無駄遣いして!!そんなもの、今すぐ返して来い!!財布も勝手に使わない!!」
「テ、テメェまた財布握る気か!小遣いくらい寄越せ!!」
「無駄遣いするから駄目だ!!」
「せめてゴム……!」
久々の雷に撃たれ、ソルが声も無く倒れた。フンと鼻を鳴らし、カイは持って上がってくれた食事に手を伸ばして、空腹を満たしたのだった。


いつもの、何も変わらない光景。

だが、少し何かが変わった。






かも知れない。




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