紅色舞姫

□第一章・壱
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「また、か」

青い陣羽織りを羽織った隻眼の青年、伊達政宗は腕を組んだまま足元を睥睨した。
正確には足元に転がったごろつきを、だが。

「やれやれ…、有り難いと言えば有り難てぇが、…せめて事前に言ってくれねぇもんですかね」

そうため息混じりに呟いたのは彼の隣に立つ小十郎で、こちらは茶色の陣羽織りを羽織っている。

「確かにな、わざわざ奥州筆頭が直々に野盗退治に出向いてるって言うのに、いざ目的地に辿り着いてみればこの有様だ」

つまらねぇ、と愚痴を零すと小十郎が微かに眉をひそめた。
そんな彼に肩を竦めてみせてから政宗はもう一度、足元に視線を遣った。

綺麗に一まとめに縛り上げられた野盗達、だがこれをやったのは自分達ではない。

最近地方で野盗が多発しているとの知らせを受けて、その粛正のために東奔西走しているのだが、実際にその場所へ行ってみると、このように既に誰かが野盗達を縛り上げているのだ。
それも一回や二回ではなく殆ど毎回と言って良い程に。

「で、手前等は誰にやられたんだ?」

政宗が問うが野盗達はだんまりを決め込んだまま口を開かない。

「手前!筆頭が話してんだろうが!?」

「阿呆、一々怒鳴っちゃ聞き出せるものも聞き出せねぇだろうが!」

ベシッ、と小十郎が血気盛んな兵の頭をはたいて賊から引きはがす。

そう、そして更に困った事にはこれを誰がやったのかがさっぱり分からないのである。

近隣の住民もその姿は見ておらず、何故か当の野盗達もそれを語ろうとはしないのだ。

「ったく…余程人に言えねぇような相手に負けたのかよ?」

半ば八つ当たり気味に放った台詞にピクリ、と野盗達が一斉に反応を示した。

「…Really?」

政宗が思いもよらぬ展開に驚いているとここまで反応してしまったら一緒だと思ったのか頭らしき男がぽつりぽつりと口を開き始めた。



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