紅色舞姫

□第一章・捌
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「何か言い残しておくことはあるか?」

刀を突き付けたまま、静かに政宗は口を開く、その後ろにはいつの間にか、同じく敵を蹴散らして来た小十郎が控えている。

「何故、……何故私がここで死ぬのだ」

「Aha?」

怪訝そうに目を細める政宗を睨み付けて畠山は怒鳴った、目を見開いて喚き散らす姿には狂気じみたものがうかがえる。

「何故!何故私が!!私はこの十余年、この地を統べるために働いて来た!!それが何故!何故貴様等のような若造に……!!」

「テメェのやり方が間違ってんだ、どんな理由があろうと誰かの絶望の上に成り立つ国なんざ、そんなもん俺は認めねぇ!!」

その言葉に畠山は顔を赤くして全身をなわなわと憤怒に震わせた。

「貴様も……っ、貴様も奴と同じ事を言うのか!!」

「何だ、誰の事を言っている?」

「恐らく、この地の前領主かと、その者は十数年前この地方に起きた謀反により戦死しております」

小十郎の推測を聞いていた畠山は突然、声を上げて笑い出した、それには確かな悪意と、侮蔑が含まれている。

「そうだ、力で人は救えぬと、散々私に高説を説いた揚句、下らぬ謀反に遭いあっさり死におった!あの愚かな男と同じだ!!貴様もここで、この下らぬ戦で死ね!!」

叫ぶやいなや、飛び掛かって来た畠山の刀を、横合いから飛んで来た別の刀が弾き飛ばす。

「なにっ!?」

「……下らない謀反?」

声にひかれてそちらを見遣れば、余程走って来たのだろう、肩を大きく上下させ、荒い息の漆姫がそこにいた。

「その下らない謀反を唆したのはあなたでしょう!!」

「…………っ!!」

「漆姫、何を……」

「……十数年前」

珍しく声を張り上げた漆姫を政宗と小十郎は信じられない物を見るような面持ちで見つめた、一方の漆姫は政宗の問いかけには答えず、投げた刀を拾い上げ、顔を伏せたまま畠山に向き直った。

「あなたはこの地方の統治権を手に入れるため、周囲の諸候を唆して、前領主の城を攻めさせた、……そして、今回と同じ様に援軍の振りをして前領主を殺した」

淡々と語られる言葉に畠山の目が見開かれる。

「謀反の後、あなたはただ一人前領主を救おうとした者としてその功績によりこの地の統治を譲り受けた……そうやって、誰にも気付かれる事なくこの地を奪い取った……!」



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