紅色舞姫

□第一章・捌
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「二人共、弱いものいじめはよくねぇだ!」

「でもいつきちゃん!あの女子ずーっとここに立ってたんだべ?」

「そうだべさ、それにあの赤ぇ目見るだ!きっと人食いの山婆にちげぇねぇ!!」

(や、山婆は初めて言われた……)

それでか、と三人のやり取りを見ていた漆姫は納得した様にため息をついた、昼間とはいえここに一人で、しかもこんな真っ黒ないで立ちでいたらそれは怪しいだろう。

「何言ってるだ、あの姉ちゃんは足も影もあるべ、それに見た目で人をいじめたらいけねぇべ!!」

「う、すまねぇだ、いつきちゃん」

いつき、と呼ばれた女の子は、ふんっと腰に手をあてると思い出したように漆姫の方に駆け寄った。

「ごめんな姉ちゃん、二人とも悪気があったわけじゃねぇんだ」

「あ、うん、いいの、何ともないし」

ね、と両手を振ってみせるといつきは安堵したように胸を撫で下ろした。

「姉ちゃんはなしてこんな所にいるんだベ?ひょっとして迷子か?」

「迷子、といえば迷子なのかな……いつきちゃんだっけ?ちょっと変な事聞いても良い?」

「なんだべ?」

小首を傾げたいつきに周りを見渡してから漆姫は目を伏せて小さな声で問い掛けた。

「ここって、お墓?」

「……そうだべ」

やっぱりか、と漆姫は唇を噛んだ、あの無数に立っている棒は卒塔婆なのだろう。

「近頃旱魃や水害が酷くて不作が続いてるだよ、おら達が一生懸命働いても、働いても全然暮らしは楽にならねぇだ」

「…………」

「おら、もうみんなが死んだり辛い思いするの見たくねぇだ……だからおらが悪いお侍をやっつけるんだベ!!」

「いつきちゃん…」

「なんだべ?……って、姉ちゃんどうしただ!?」

ぐっと拳を作って意気込んでいたいつきだが漆姫を見るなり急にうろたえだした。

「なして姉ちゃんが泣いてるだ?どっか怪我したんだか?」

「あ、れ……ううん、なんでもないの」

いつの間にか零れていた涙を拭って、漆姫はいつきを抱き寄せた。

「ね、姉ちゃん!?」

「……ごめんね」

小さな呟きはいつきの耳に入らなかったのか彼女はただ首を傾げるだけだった。



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