紅色舞姫

□第一章・肆
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「しーげーざーねぇぇぇ…」

「へへ…あれ?」

冷や汗をかきながら逃げ道を探していた成実は辺りの様子に気付いてあっと声をあげた。

「やべ、城の外に出ちまった」

「Ah?……ほんとだな」

逃げるのに必死だった成実と同様に追い掛けるのに夢中だった政宗も気が付かなかったらしく、驚いたように周りを見渡した。

「良かったじゃねーの、部屋詰めから逃げ出せて、…じゃっ!!」

「なっ!?成実っテメェ!!」

一瞬の隙を突いて姿を消した成実に悪態をついて政宗は改めて周囲を見渡した。
成実の言う通り無意識ではあるがあの半軟禁状態から抜け出せたのだ、ただで帰るには惜しすぎる。

「これは久々の城下を満喫するしかねぇな」

政務をしていたため、幸いにしていつもの鎧姿ではなく着流しを着ている、怪しまれる事はないだろう。

とりあえずぶらぶらと歩いていると見覚えのある暖簾が目についた。

「この間の茶屋…行ってみるか」

別に小腹が空いていた訳でなく、何となくあの赤い目の事が気になった。


「いらっしゃーい!…あ、お兄ちゃんだ」

店の戸をくぐると真っ先に気が付いた八重がぱたぱたと駆け寄って来た。

「おう、また手伝いか?」

「うん、あ、そーだ、この間はありがとうございましたっ!」

「気にすんな、…それよりこの間の…漆姫はいないのか?」

八重の頭を撫でてやりながら店内を窺うが、どうもそれらしい姿は見当たらない。

「お姉ちゃんなら今はうちのお店じゃないよー、多分川沿いの料亭」

そういえばやたら賃仕事をしていると成実が言っていた気がする。

「もしかしてお兄ちゃんもお姉ちゃんに『コクハク』しにきたの?」

「ガキがませた事聞くじゃねぇよ、ちと顔を見に来ただけだ」

「ふーん、じゃあそういう事にしといてあげる!」

「そいつは助かる」

グリグリと八重の頭を押さえながら政宗は苦笑した、前回の別れから分かるように中々純情な彼女の耳にそんな事が入ればまた赤くなって店の奥に引っ込んでしまうだろう。



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