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□ただ君の隣で
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◇◇◇◇◇


気持ち良くて、起きがたいのに、普段と違う感覚に俺は、うっすらと目を開けた。


「………?」


「寝ぼけ眼(まなこ)だな。もう少し寝ていればよかったのに」



「……る、きあ…?」


「ふふっ、寝ている時は、少し眉間の皺も緩むのになぁ。撫でても怒らぬし」


そう言われて、やっと気付いた。髪を撫でられているというこの状態に―。

机に突っ伏していた体勢からガバッと身体を起こすと、ルキアは大きく声をあげた。


「なっ、いきなりびっくりするではないか!」


「ビックリしたのは、こっちだっつーの!なに人の頭勝手に撫でてんだよ…!?」


「だって、撫でたくなったのだ。いいではないか、髪をなでるくらい」


「な、撫でたくなったって。んなこと知るか!は、恥ずかしいだろ…!高1にもなって頭撫でられるとか」


頬が火照るのを感じる中、思い切り抗議したつもりだった。ヤンキーだの、不良だの、変な誤解ばかりうける俺が、女に頭を撫でられていること自体も、とんでもなく不自然で、おかしなことに思えた。

それに何より、小さな子どものように扱われたみたいで、やはり恥ずかしさは隠せない。

なのに、この居候死神ときたら、相変わらず俺とは考え方が真逆らしい。


「恥ずかしくないだろう。今ここにいるのは、一護と私だけだ。他の誰が見ているわけでもないのだから。それに、甘えたっていいだろう。子どもに限らず、大人でもな」



子どもじゃなくても、甘えていい…?


思ってもみない言葉を投げかけられた。


思えば、甘えたくても、甘えられない時間が長かったように思う。おふくろがいた時とその後では、甘えに対する考えも変わっていたから。

甘えは、したらいけないことだと幼心に感じていた。俺より甘えたいのは、妹達だからと、ずっと我慢することが当たり前だと思って…、そう思ってきたのに…

……この歳になって、“甘えてもいいのだ”と目の前の奴は言う。

どうしていいかわからなくなり、ルキアの目を真っ直ぐ見ることが出来なかった。


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