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□遠距離と近距離
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「この子は、辛い時や淋しい時に、それを口に出すことはあまりしないけれど、今回はちょっとだけ出てしまったようでね」


その時のことを思い出したのか、浮竹さんは穏やかに微笑んだ。


「“そろそろ一護くんに会いたいんじゃないかい?”と訊いたら、“………会いたい、です…”と小さく呟いていたよ。すぐに聞かなかったことにしてほしいと言っていたけれど。あの時の朽木は、とても可愛くて。これを一護くんが見ていたら絶対現世に連れて帰っちゃうだろうなぁって思ったくらいだった」


そう言いながら、眠るルキアの頭をぽんぽん撫でた浮竹さん。



「明日は思い切り一護くんに甘えるといい。誕生日なんだし、副隊長の休みは僕が許可する。14日と15日、朽木はお休みだ」


浮竹さんは、そう言ってルキアの頭から手を離すと、棚にある帳簿を手にとった。


「あの…一つ訊いていいですか…?」


「何だい?」


「ここ数日、ルキアと全く連絡が取れなかったんですけど、それは…」


「…ああ、朽木はこの一週間、うちの隊の者を率いて調査・探索任務に出ていたんだよ。行った場所が、電波状況の悪いところでね…僕も朽木と連絡を取るのに苦労したんだ。君が朽木と連絡がつかなかったのは、そのせいだろう」


「そうだったんですか…」


「今日の午後、やっと任務から戻ったんだが、朽木はそのまま報告書作業に入ってしまってね。“疲れているだろうし、今日は帰って休んでいいよ”と言ったんだが、“大丈夫です”の一点張りで。うちの副隊長は、本当に頑張り屋さんなんだけど、頑張り過ぎて時折心配になっちゃうんだよね…」


それをきいた俺は、浮竹さんの気持ちが痛いほどよくわかった。ルキアに近づいて、その頬に少し触れる。



(頑張りすぎなんだよ、オマエは。あんま無茶すんなよな…?)


ルキアにそれが伝わったのかどうかはわからないが、“ん…”とその小さな口から声が零れた。



「さて、一護くん1つお願いがあるんだが―」


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