空想

□だから君のために(13)
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「よお、親友!!元気か?!」

うるさいのがやってきた。
今日も適当にかわそう・・・。

「ああ。お前も元気そうだな。」

「へへ。まあな。」

気持ちが悪いくらい峰がくねくねしているので、ここは早めに・・・と思い、

「じゃぁ、そういうことで。」

「おお!っっじゃなくて、聞いてくれよぉ。俺の話を。」

「いや、いい。悪いが、急いでるんで。」

「冷たいぜ、親友。自分はさっさと縁談がまとまったからってさぁ・・・。」

「は?なんの話だ。」

こいついまなんて言った?俺の縁談が決まったとかなんとか・・・。

「まあまあ、隠すなよ。つーか宮中のほとんどの奴が知ってるし。」

「だから、どういうことだ!!」

思わず、怒鳴ってしまう。

「え?違うのか?千秋と多賀谷宮の姫との縁談話。まだ二人が付き合っていたとは正直びっくりだったぜ。
まあ、でも、身分もぴったりだし、お似合いなんじゃねえの?俺も縁談決まりそうだし。」

「つまり、俺と彩子姫が結婚するって話が、宮中に知れ渡っているというのか?!!」

「俺の話は無視かよ。そうだよ。だからお前に祝いの言葉でもかけようと思ってて探してたんだよ。」

「峰。」

俺は自分でも感じる黒いオーラを出しながら峰に言った。
なんてことだ!!宮中に知れ渡っているということは、後宮にも話が広がっているということだ。

「は、はい!!」

「その話はでたらめだ。確証のない噂をまさかお前広めていないだろうな!!」

「い、いえ!俺はただ、昔お前が彩子姫の所に通っていたと事実を述べただけで・・・」

「はぁぁ???ったく余計なことを・・・」

「ごめんよ千秋ぃ!!怒んないでくれよ!!でも、それだけでこんなに話が広がるはずないだろう!!」

確かに峰が噂の発端ではなさそうだ。

「お前、今後そういう話を他人にしてみろ!ただじゃおかないからな!!!」

「(ヒィー!)は、はい。分かりました。」

俺の感が間違っていなければ、噂の出所は左大臣。まずは、多賀谷宮に直接話を聞かなければ!!


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俺は今多賀谷邸に向かっている。
事の発端は、たぶん俺が送った文だ。あの日父に彩子姫への文を急かされ、当たり障りのない文をすぐさま届けさせた。
何か勘違いをされている。まずは誤解を解いて、丁重にお断りをしなければ。ここまで話が大きくなると、無視もできない。

あのあと、峰と別れてからも何人かに声をかけられ、同じこと聞かれ、同じことを答えた。
のだめは、のだめはこのことを聞いて、どう思っただろう。
あいつ、変に思い込みが激しいからな。直接俺が話せればいいんだけど、帝との約束もあるし・・・
とりあえすよしたかにゆだねるしかない。
よしたかにはさっき会い、噂の事情を説明し、のだめへ伝えてくれるよう頼んでおいた。

『やっぱりですね。中将はそんなことをしないと思っていました。』

明らかにほっとした様子だったので、たぶんよしたかも俺を少なからず疑っていたのかもしれない。
まぁ、疑いは晴れたが。あとはのだめの気持ちが気になるところだ。うまくやってくれるといいが・・・
とにかく、俺は俺で出来ることの最大限を努力しよう。

「やあやあ、中将殿。わざわざお越しいただき、悪かったね。」

この物腰のある多賀谷宮様は、宮家の中でも指折りの名門家だ。

「はっ。突然に伺いまして申し訳ございません。」

「いやぁ。全くかまわないですよ。彩子も時期にこちらに参る。しばし待たれよ。」

「ありがとうございます。ただ、彩子姫が参られる前に、宮様にもお伝えしたい旨がございまして。」

「うむ。彩子には話せないことののですか?」

「いえ。そうではございませんが、宮様に先にお話をさせていただきたいと思います。」

「わかった。聞きましょう。」

これから話すことを、この宮様はご理解下さるだろうか・・・

「今、宮中では、私と彩子姫との縁談話が広まっています。」

「おお、そうか。ずいぶん早いなぁ・・・。先日中将殿より結婚の申し出の文が届いたであろう。私も嬉しくて、ついつい周りのものに話をしてしまったのだよ。」

なに?結婚を申し込む文だと!!もちろんそんな物を出した覚えはない。

「宮様。はっきりと申し上げますが、私はそのような内容の文はお出ししておりません。本日は彩子姫との縁談話をお断りに参りました。」

「な、なんと!!私はてっきり結婚を申し込みに参られたと思っていたのだが・・・じゃあ、先日の文は・・・?」

「私が嘘を申しました。」

すると、彩子姫が現れた。

「彩子?・・・いったい・・・嘘とはどういうことだ!!」

「真一殿お久しぶりね。またお会いできるなんて思いませんでしたのよ。」

「彩子姫・・・。」

「彩子!どういうことだ!!」

「真一殿の言うとおり。先日届いた文は、ただのご挨拶の文。私も未練がましく文なんて出してみたら、案の定、そっけない文のみ。
悔しくて父宮に嘘をつきましたの。ごめんなさい・・・私と真一殿の縁談が浮上してきて、もしかしたら今からでもって思ってしまったの。
でも、私の思い違いだったわ。真一殿にもご迷惑をお掛けしました。なんとお詫び申し上げてよいのか・・・。」

「彩子姫。その縁談の話、どなたから伺ったのですか?」

「左大臣様が、父宮様にお話しされたのですよねぇ。」

「そ、そうだ。左大臣殿が中将殿が彩子の元に通っていると申しておったのだ。それを聞いてすぐさま内大臣殿に話をしたら、案の定あちらも乗り気で・・・
そうしたら、彩子からも文を届けて欲しいとせがまれ、これは、中将殿も承知のことだと思っていましたよ・・・。」

「私は何も関与しておりません。彩子姫には申し訳ないのですが、結婚の意志は私にはありません。宮様にもご理解いただければ幸いです。」

あの左大臣のじじい。何かしでかすとは思ったが、何も関わりのない人たちまで巻き込みやがって!!許せねぇ!!

「中将殿。今回の事は彩子が招いたこと。気になさるな。私としてはとても残念だが、中将殿にそうはっきり申されてはこれ以上何も言えん。
だが、おかしいのぉ。私が漏らしたことがこんなにも早く宮中に回るとは・・・噂とは怖いものですな。」

「本当に。早くこの噂が消えて、彩子姫にも良い縁談が来ること、心より願っております。彩子姫もどうか、お幸せに・・・」

「私を責めないのですね。やさしくなったのですね、真一殿は。誰か良いお人でも出来たのですか?」

「・・・今は詳しく申し上げられませんが、そうですね。そのうちお分かりになりますでしょう。」

「真一殿・・・。お幸せにね。」

「ありがとうございます。」

少なからず、この件に関して、彩子姫の暴走に腹は立ったが攻めるべき人は他にある。俺にも責任がある。
ただ、宮様も彩子姫も傷つけてしまったことが許せねぇ!
それと、のだめだ。分かってくれると信じているが、文も出せない今、疑われても仕方ねぇ。
・・・帝にこのことを話すか、話すまいか正直・・・悩む・・・。

つづく

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事の発端はやっぱり左大臣が仕組んだこと。
彩子姫の嘘も便乗して話が大きくなりすぎましたが、
とりあえず、一件落着?
でも、のだめちゃんがまだ未解決デス。

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