空想
□だから君のために(12)
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のだめが後宮に入って1ヶ月が経った。
俺の周りでは何事もなかったように、過ぎていた。
ただ、最初の方は辛かったなぁ・・・今は幾分か落ち着いてきたが、最初の一週間位はいてもたってもいられなく、
何度のだめの局に忍び込もうと思ったことか・・・
なんとか思いとどまって、今に至る。
俺はのだめと会えない寂しさを、仕事に打ち込むことで紛れさせた。
その結果、いつの間にかいろいろな方に買われてしまって、今では縁談の申し込みの文が絶えない。
まあ、のだめがいるわけだから、そんなものには目もくれないでいるが、中には諦めきれずしつこく縁談をせまる方もいた。
なんどのだめの名を出そうとしたか・・・しかし、帝との約束にのだめにはもちろん、他の者にはあの契約を決して口外しないことも承知させられた。
「やあ千秋!!浮かない顔をしているね。さては女の所にでも通っているのか?」
「そんな訳ないです!何考えてんだあんたは!!」
俺のもっとも苦手とする松田中納言が絡んできた。
この人は、仕事は尊敬できるが、それ以外は本当にあきれる・・・
どうせ俺に絡んで楽しんでいるだけだろうから、まともに相手にしてはいけない。
真一は自分に言い聞かせ、なんとかかわそうとするが、松田も引かない。
「ふ〜ん。。。じゃあ、彩子姫とのことはもう終わったの?」
「な?!なんであんたがそんなこと知っているんですか?!ってかいつの話だよ・・・。」
「おれの情報網をなめないで欲しいね。で、どうなの?千秋のことだから卒のないどこかの姫君のもとにでも通っているんだろ?
どんな姫君なの?やっぱり彩子姫?」
「違います。」
まったくどうしてこんなにしつこいんだよ!!
「へぇ・・・俺は君と彩子姫との噂を聞いたんでね。違うの?でも内大臣様から聞いたんだけどなぁ・・・」
「・・・何かの間違いです。もういいでしょうか?私もそろそろ持ち場に戻らないと・・・。」
「まてよ、じゃあ、今夜俺の屋敷に来い!ゆっくり聞かせてもらおうじゃないか。いいな。絶対に来いよ!!!」
言いたいことだけ言って、松田は去って行った。
はぁぁ〜〜、疲れる・・・なんであの人はいつもこうなんだ・・・今夜かぁ・・・うん。適当に丁重にお断りしよう。
彩子姫はのだめに会う前に通っていた姫だ。宮家の血筋で品があり、頭もよく、身分もそれなりに高い。
ただ、彩子姫は俺とは性格が似ているからなのか、喧嘩ばかりしていた。
そんなこともあり、自然に足が遠のいていったのだ。今更そんな話が出回るなんて・・・本当に今更だ。
すると、至急内大臣邸に戻れと父からの命令が下り、松田の誘いを断るいい口実だと思いつつ、早めに退出をした。
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「真一、久しぶりだな。どうやら最近は頑張っているようだな。内大臣家としては誇りに思うぞ。」
「恐れ入ります。まだまだ勉強中ですが、これからも励む所存です。」
「うむ。いい心がけだ。どうだろう、そろそろお前も身を固めないか?聞けば、縁談の文に目もくれないそうではないか。
真一、お前はやがて宮中のになくてはならない存在になるだろう。その為には、支えが必要だ。お前の支えとなってくれる、誰か良い人はいないのか?」
「はぁ・・・まだまだ私は若輩者。それに、今は仕事が第一ですから、そんな暇はありません。」
帰っても縁談か・・・最近こればっかりだな。さすがにのだめの名は言えず、とりあえず適当にごまかそうとした。
「そんなことを言う年ではないし、出世にも響く。聞いたところ、宮家の彩子姫の元に通っていたそうだが、どうなんだ?」
「・・・彩子姫とは何もありません。」
「なんだ、わしはてっきり今でもお前が彩子姫と続いていると思ってな。彩子姫の父宮殿に最近はどうなんだと尋ねられてね。」
「は??なんですって?!!」
なんだって!!それじゃあ、彩子姫俺が付き合っていると思われているのか!!
「いやぁ良い縁談だと思ってね。案の定、宮殿も乗り気でね。どうだ?真一?これも何かの縁。彩子姫を迎えてはどうだ?」
「じょ、冗談ではありません。今は縁談のことは考えられません。結婚する気も全くありません!!」
俺にはのだめがいるのに。と叫びたい。
「まあまあ、少しは考えてみなさい。ほれ、彩子姫から文を預かってきたのだよ。失礼のないように返事は早めにな。
そういう結婚も悪くない。相手は身分にも申し分ないし、そうあせらなくとも良い。ゆっくり考えなさい。」
「・・・。」
「くれぐれも、返事は早めに出すように。」
父の部屋から自室に戻り、頭が混乱していたこともあり、少し冷静になろうと努めた。
なにやら話が変な方向に向かっている気がする・・・のだめの耳に入らなければいいが・・・
しかし、真一の願いむなしく、宮中には真一と綾子姫の縁談話が噂になり始めていた。
つづく
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まずいです。のだめの耳に入ったら・・・