空想
□だから君のために(8)
1ページ/1ページ
のだめと真一君の出会い話になります。
-----------------------------------
思えば、俺とのだめの出会いは最悪だった。
伏見にある大川は人も少なく、ひとりで遠乗りに出かけるには最適だった。
その頃の俺は、単調な毎日に飽き飽きしていて、仕事でうまくいかなかったせいもあり、少しイライラしていた。
大川の川辺で悶々としていると、少し先で女が水遊びをしている。年は俺よりも5つ程下だろうか?
茶色の髪は太陽に透けて、水しぶきを浴びてキラキラしていた。
なんとなく、ぼーっと眺めていると、やがて女はなにかに足を取られたらしく、見事に川に滑り落ちたのだった。
「ぎゃぼー!!冷たいデス!!」
あわてて起き上がろうとするが、あせっている為、ふたたびこける。
「ムキャー!!これはひどいデス!」
変な奇声を発しているなぁと思いながら、見るに見かねて、近寄り、くつくつと笑いをこらえながら手を差し伸べてやった。
「おい!大丈夫か?ってかお前その恰好ひど過ぎだぞ?」
「ありがとうございマス。ムキャッ!ホントです。これじゃあマキちゃんに怒られマス。」
「家は近いのか?俺の直衣貸してやるから、とりあえず羽織っておけ。」
本当に面白い女。表情がころころ変わる。それにしてもひどいナリだ。
思わず、ぷっと吹き出してしまった。
「重ね重ねありがとうございマ・・・、ていうか、なんか笑っていマセンか?」
「いやいや失礼。あまりにも恰好が・・・。俺の直衣がまたさらに・・・。」
「ぎゃぼん。そんなにひどいデスか?のだめ、あんまり気になりまセンヨ。それより、この直衣いいにおいデス。はぅん・・・。」
うっとりしながら、俺の直衣をクンクンと嗅いでいる。
「お前・・・変だぞ。」
呆れながら、そのなりをまじまじと見た。
着ているものは上等な物。町娘ではなく、どこかの貴族に仕えている女房かな?
そんなことを思っていると、女は名乗った。
「あ、私、のだめといいマス。野田恵だからのだめって呼んでください。」
野田恵?どこかで聞いたことあるような・・・
「ああ。俺は千秋、千秋真一。」
「千秋様。本当にありがとうございマシタ。のだめの今いる所、ここから歩いてすぐなので、一緒に来てもらえマスか?
お礼もしなきゃダシ?直衣も返さなきゃダシ?」
「うん。わかった。」
さすがにこんな恰好で帰れなかたので、付いていくことにした。
そうすると、のだめと名乗る女は俺の少し前を歩きながら、楽しそうに歩いて行った。
つづく
------------------------------------------
もう少し出会い編続きます!!