空想

□だから君のために(7)
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「千秋〜遅いデスヨ〜。」

くつろいだ様子で帝は真一を向かいいれた。

「はっ。申し訳ございません。」

「体調はもう大丈夫ナノ?」

「はい。少々休ませていただいたところ、大分落ち着きました。」

体調が悪いなんて嘘。そんな俺を見抜いているのかいないのか、のらりくらりと帝は姿勢を整える。

「そうデスか。体調管理には気をつけて下サイよ。千秋がいないと、私困りま〜す!!
で、実はここに来てもらったのは、相談がありマシテネ。」

「はい。」

今日はいつものわがままではなさそうで、のらりくらりの表情はそのまま、ただ声だけはいつものふざけた口調ではなかった。


「もう、耳に入っているかもしれまセンが、先刻左大臣が私の元に面会に、一の姫の入内の許しを請いにきました。」

「なっ!!」

なんだと!!左大臣は既に帝に意思を伝えていたのか!!

「うん。でね、私の情報によると、千秋はその一の姫、のだめちゃんて言いましたね?と千秋は付き合っていると聞きまシタ。
その真意を確かめるために、ここに呼んだんデス。」

「・・・。」

「で、どうなの?付き合っているの?」

ここで付き合っているといったらどうなる?のだめの入内はなくなるか?いや、そこまで話が進んでいるのであれば、
ここで俺がなんと言おうとも、後戻りはできないだろう。どうすればいい?

「・・・・。入内の話は本当ですか?どうなさるおつもりですか?」

「千秋、私の質問に答えていまセンよ。でも入内は私の考えは賛成です。のだめちゃんはかわいいし、胸も大きいし、
なにより琴が上手デス。後宮に上がれば、いつでものだめちゃんの琴を聴けマス!!」

「え??帝はのだめ・・姫のことを御存じなのですか?」

「ハイ。以前にお忍びでこの鳥羽の院に遊びに来た時に、偶然のだめちゃんに会いマシタ!
もとろんお忍びだったので、私の身分は明かしませんでしたが、その時、琴も演奏してもらいマシタ。
あの琴はデタラメだらけでしたが、音がキラキラしていて気持ちよかったデス。私、とっても感動しまシタ!!」

そうか、そんなことがあったのか。たしかにのだめの琴はすごい!聞いている人たちを引き付ける何かをもっている。
ただ、帝に気に入られてしまったばっかりに、入内させられてしまうか!俺は阻止できないのか!!

「う、噂で伺った事があります。のだめ姫の琴は皆が愛してやまない音だと・・・」

俺もその一人だ。本当にあの琴の音色はすごい。

「千秋?隠しだては無用デスよ。私は、その辺をきっちりしてからのだめちゃんを受け入れたいと思っていマス。
千秋の気持も大切にしたいと思っているんデスよ。」

俺は、覚悟をきめた。

「私は・・・のだめと付き合っています。私もあの音に捕らわれました。ただ、入内の件は私にも思いもよらないことで、なんと申し上げてよいのか・・・」
正直、身分の上の人たちの決定事項を自分は否定できない。ましてや、対左大臣ともなると、自分はひどく嫌われているので、ことはなおさらまかり通らない。
俺は、のだめと別れなければならないのか?ここで正直に打ち上げたことによって、帝はなにか手を打ってくれるのか??

「千秋は、のだめちゃんを愛していマスか?結婚を考えていマスカ?」

「その・・・結婚は、いろいろと問題がありまして、先のことはあまり考えていませんでした。父上である左大臣様が私を受け入れてくれるはずもなく、
このままではいけないと思いながら、今日まで来てしましました・・・」

なにを考えている?このじじいは?

「情けないデスねぇ・・・。わかりマシタ。のだめちゃんは入内させマス!!そんな千秋についていっても、幸せになんかなれまセン!!」

「は?帝は、私とのだめを認めて下さらないと?」

「あたりまえデ〜ス。決めました。」

「ちょ、ちょっと待って下さい!!俺はのだめと付き合っているんです!帝のおっしゃることでも、そうですか。と聞き入れられません!」

「ウルサイデス。男なら、引き際は肝心デス。金輪際のだめちゃんにちょっかい出すのは禁止シマス!これは命令デス!」

「うっ・・・」

帝はぴしゃりと言い放って、扇で口元を隠しながら、俺を黙らせた。帝の命令は絶対のこの世界。逆らうことなどできるはずもなく、
俺は、ただただ茫然とその場にいるのだった。


つづく

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何やら暗雲が立ち込めてきました。

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