sweet

□sweet jealousy
2ページ/4ページ



フワリ

冬の冷たい風が、艶やかな金糸を持ち上げる。

ここ数日。
寒波が続いたが、今日は比較的穏やかで、暖かだ


乱菊

を除いては。

『ガチャリ』
ノックもなしで扉が開く音がする。

「乱ちゃんの周りだけ寒波到来やね」
幼馴染みの不機嫌など、生暖かい微笑みで遮断して。
乱菊の隣に移動する。
フワリ

三番隊の隊羽織が風に舞う。

「何見てるん?」
「…ギン」

霊圧を閉じて居ても、独特の存在感と軽い口調から振り向くまでもなく彼と分かる。

「おままごと…よ」
「?」

乱菊の見下ろす視線の先には
弁当を仲むつまじく食べる銀髪の少年と黒髪の少女の姿。
年格好もそう違わず、二人を護廷の隊長格と知らなければ、微笑ましいカップルにしか見えない。

本当にお似合いで。
あたしなんて、お呼びじゃないわね。

「十番隊隊長はんと…五番隊副隊長はん…」
市丸は一発で、可愛いい幼馴染みの不機嫌の理由を理解した。
「…雛森。今朝、流魂街のおばあ様の家から帰ったとかで…」
「実家の味やね」
「あたしも一緒にどうかって誘われたんだけどね」
「一緒して邪魔すれば良かったやないか?」
「嫌よ!」

柳眉を釣り上げて全力否定する。

「ナンデ?」
「こんな顔見せられないでしょ!」

「可愛いいやん。僕には見せるのに」
「ギンは隊長じゃないもの。当たり前じゃない」

言い切る幼馴染みに一抹の寂しさを覚える。
「これ以上、何を望むん?乱菊は」
「…あたしの心に聞いてよ」
「雛森ちゃんが知らないあの子の雄の顔まで、乱菊は知ってるのに?」

赤い唇を吊り上げて
市丸は
ねっとりと笑う。

「いっ…イヤらしい言い方しないでよ…ただ…あたしが知らない隊長も……雛森は知ってるんだなぁって」
「憎くなった?」
「え?」

「ええよ。雛森ちゃんが憎いなら殺してあげよか?」

「え?」

乱菊が逃げ出さないように顎を押さえて、金糸に指を絡める。

「……ギン?」

怯えを含んだ蒼の瞳さえ可愛くて。
市丸は瞼に薄い唇を押し付けた。

「やっ」




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ