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□月華
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彼女は病んでいた。
笑うし喋るしよく食べる。いつもと変わらぬ姿に、皆騙されている。
彼女なりの自分を保つための精一杯の虚勢。
それに気が付く自分は、本当に松本しか見えていないのだろう。
彼女の心をあの日、市丸が連れ去ったのを知りながら。
何もデキナイ自分。
何のチカラも無い自分。
松本の華奢な体をくるんでやる体格も無いのだ。
彼女を好き。気持ちだけではどうする事も出来ない。
自分が滑稽で哀れで。
それでも。
頑張る姿を見かねて。深夜自室に呼びつけ答えの分かりきった質問をする。
「お前はドコニ行きたい?」
銀色の月光が降り注ぐ、空気の清んだ夜だった。
怯えを潜めた瞳に、覚悟はあってもジクリと心は痛む。
苦い溜め息がもれる。
「聞けねぇな。忘れたのか?お前は護廷十三隊の副隊長なんだぞ」
俺の副官だ。鎖に繋いでも行かせねぇ。
「分かっています」
静かに聞いていた彼女が、やっと発した言葉。
諦めの
呪文……なのだろうか。
苛立ちを覚えて、その華奢な顎を捕らえ瞳を見つめる。
「!お前……」
「抱いて」