sweet

□sweet jealousy
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「市丸…松本を放せ」
窓から入って来た日番谷が、冷たい声で市丸に命じる。

「お早いお帰りやね」
嘘ばかり。
隊長を焚き付けるために、閉じてた霊圧解放したくせに。

日番谷をからかうためか、気紛れか。乱菊にさえ把握させない闇が市丸には存在する。

雛森を殺そうか?

あの台詞はあながち冗談ではないのかもしれない。
日番谷の背中に隠れたい衝動を必死にこらえた。

すべらかな肌と金糸から名残惜しそうに指を放す市丸から、己の副官の腕を掴み小さな背中に隠した。

「うちの隊に何か用か?」

「ああ、そやった〜………ん?」
「あん?」
両手を見て、左右をキョロキョロ見る。
急に挙動不審になった市丸に二人は顔を見合わせた。

「忘れた」
「はあ?」
「そやから〜」

「隊長〜」
その時。イヅルが駆け込んできた。
黄色の薔薇の花を抱えて。

「イヅル〜助かったわ」
副官の手から花束を取り上げて、日番谷の頭の上から乱菊に渡す。
『……黄色の薔薇………あんたあたしに喧嘩売ってんの?』

そう怒鳴り付けるより先に、

己の頭上を通過した薔薇を憎々しげに見上げて

「松本に黄色の薔薇は似合わねぇ」

と。
言い
糸目を不機嫌に吊り上げる市丸を見たイヅルは、おろおろと乱菊に助けを求めるが、彼女はツーンと窓の外を見ている。
すでに泣きそうだ。

「じゃ、松本副隊長はんには、何色の薔薇が似合う言いはるんや?」

日番谷はニヤリと笑って

「白」

と。
答えた。

瞬間、
不機嫌に黙り込む市丸と、真っ赤に赤面する乱菊を交互に見て、イヅルはますます混乱しておろおろするばかりだった。



十番隊執務室の外で、1人雛森だけが、うんうんと頷き。

『あたしだったら恥ずかしくて言えないわ』
と、
心の内で呟いた。

ちなみに白薔薇の花言葉は




私はあなたにふさわしい


である。





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