コトッと音を立てて
床に落ちたシルバーリング。


「かっちゃん、指輪落ちたで」


「Σあ、ほんまや!;」


リングの持ち主、克哉は慌てて落ちたシルバーリングを拾う。



「それにしてもかっちゃん、それ…だいぶ年期入ってんなぁ。ボロボロやん。新しいの買わへんの?」


「え?あぁ…買わへんよ。……買わへん…。」

「?」

まるで、恋人を見るかのような眼差しで、そのリングを愛おしそうに見つめる克哉。
タクヤは不思議そうにその光景を眺めていた。





















〜Silver Light〜



















…これは、俺が音楽に興味を持って、間もない頃の話。







月光が降り注ぐ中、
毎日、毎日、忙しなく歩いている人らをよそに、俺は路上でただただギターを弾いとった。


たいていは素通り。

ごくまれに立ち止まる人もおったけど、
俺の音にちゃんと耳を傾けてくれる人は誰一人としておらんかった。


この時はまだ、タクヤや信人とバンド組もう!なんて話もなくて、
俺一人が意気がって、
たった一人でギターを弾いとったんや。


……タクヤがおったら、立ち止まって聞いてく人もおったかもなぁ(苦笑)











「(毎日毎日…そんな急いで何処行くねん。)」


目の前を通り過ぎてく人らをぼー、っと眺めながら、そんな事を思っとった。



すると、


「(ん…?)」



俺の直線上に(とは言うても距離はかなりあるんやけど)一人の少女が上を見て突っ立ってた。



「(??何見てるんやろ?)」



不思議に思って、少女の見つめる先をたどってくと、


「(お、)」


そこには、三日月が。


「(…月見とるんかぁ。)」



まわりには、忙しく歩く大人しかおらんから、
俺にはその少女が物珍しい生き物に見えた。
そしてそれと同時に、
その少女に目を奪われ、………そう、
時が、

止まった。























――翌日の夜。









昨日の少女は、月をじっと見つめてただけで、数分したらまた歩き始めて夜の街の中へ消えてった。
なんで追い掛けんかったんや!とか後悔をしたりしなかったり…。









「あー、綺麗な子やったなー。」


相変わらず昨日と同じ場所でギターを弾く俺。

そして相変わらず誰も聞いてくれへん。カナシー









「あの、」





あぁ、あぁ、そうだとも。
俺の音なんて誰も…「あの!」


「Σ?!」



世の中にたいする不満不平を心ん中で叫んでた俺を我に返らせたのは、



「あ゙――――――!!!!」
「Σ(ビクッ)」










紛れも無い、昨日の少女やった……。





























2頁目ドゾ→



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