物語-弐


□『 素直じゃない二人 』
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「薫殿、遅いでござるな。」

「まだ昼前だろ。」

「こんなに長い間会えないのは寂しいでござるよ。」

「剣心も変わったなぁ。」



そう弥彦は拙者に呆れる。

拙者はこの変わりように嬉しくなり、笑う。



薫殿に会えないのは辛いでござるなぁ。



「おーっす。」

「左之。」

「嬢ちゃんの着物、少し持って行くぞ。」

「なんで左之助が着るんだよ?」

「俺じゃねぇよ。嬢ちゃんが着替え欲しがってるんだよ。」

「薫はそんなことお前に頼んでるのかよ?」

「いや、まぁ、…そうだな。」


左之の表情が少し変わった。



「嬢ちゃんの部屋に入るぞ。」

「左之。」

「なんだよ。」

「拙者が持って行くでござる。」

「お前は家事があんだろ。いいんだよ、俺で。」


拙者がなんと言おうと左之は固くなに断る。

この男は本当に真っ直ぐな男だ。

だから嘘の一つに焦りが出る。


左之は薫殿の着物を持って、足早に出て行った。




「弥彦。少し拙者は出かけるでござるから。」

「俺、留守番かよ。」

「すまない。」




そう弥彦に言い、拙者は真っ直ぐに向かった。


恵殿の元へ。



この時間は診療所にいる。

薫殿はとっくに帰ってきてもいいはず。








 
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