物語-弐


□『 涙雨 』
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弥彦が出て、二人の日々が続く。




当たり前に剣心が隣にいる。


当たり前に剣心が笑ってる。




そんな日々がある。



もう独りなんて忘れたわ。

だって、剣心が居るんだもの。

だって、剣心は居るんだもの。





でも居ない…。





怖い。




「…薫殿?」


そう雨音をかき消すように静かに響く優しい声。






「剣心っ…。」

「どうしたでござるか?」


そう微笑んで私の顔を覗き込む。

そして涙を拭う。




私……泣いてたの?





「何処に…居た…の?」

「道場に行っていたでござるよ。前に雨漏りしたのを覚えていたから。」

「なんだ…。」




存在を確かめるように、顔や手を触る。

剣心は笑って、その手を握る。




「最近、剣心が居なくなる夢見るの。居なくなる気がして怖い…。」









剣心が握ったその手にそっと口づけをする。




「拙者の居場所はここでござるよ。」

「だって、流浪人って…。私、剣心いなきゃ嫌よ…。」

「もう流れないでござる。ここが家だと思っている。」




その言葉にまた涙が溢れる。




「拙者は幸せを見つけた。それは薫殿と生きることでござる。」

「私も剣心と生きたい。」




そう誓って、唇を重ねた。







 
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