物語-弐


□『 続・甘えんぼ 』
3ページ/3ページ

「よしよし。」

「おろっ。」


薫殿が拙者を抱きしめて、頭を撫でる。


「か、薫殿!」

「どうしたのー?」


まるで剣路をあやす時のように、優しく言う。


…。

……。




こんなことされたら素直に甘えるでござる。



「薫殿〜。」

「なぁにー?」

「拙者のことをずっと放っておきすぎるでござるよ。剣路、剣路って、拙者もいるでござる。」

「ごめんね。」

「拙者だって薫殿に大好きと言って欲しいし、薫殿に抱きしめてもらいたいし、薫殿に接吻して欲しいでござる。」

「はいはい。私は剣心が一番大好きなのよ。愛してるわ。」



そう薫殿をギュッと抱きしめて、甘い唇を重ねて来る。

久しぶりの甘さに拙者は剣路が母乳を飲むように、薫殿の唇を吸う。



「んッ……ふッ……。」

「……………………。」


甘い。

薫殿の唇はこんなに甘い。


しばらくして唇を放すと薫殿はクスクス笑う。



「お父さんが息子にやきもちって、初めて聞くわ。」

「剣路ばかり可愛がる薫殿がいけないでござるよ。」

「もう甘えんぼねぇ。」

「剣路もいいでござるが、拙者だっているでござるよ。」

「剣心っ。」



そう薫殿はまた拙者に口づけをする。

唇や頬やおでこに。

くすぐったくて、愛を感じる。



たまにはこのように薫殿から積極的にされるのもいいでござる。




「母乳って…、どんな味でござるか?」

「さぁ?解らないわよ。」

急に真顔で尋ねる拙者に驚く薫殿。



「少し味見を…。」

「ちょっと!」

そう言って、拙者は笑顔で薫殿を寝かす。

今度は立場が逆転。

薫殿はバタバタと抵抗する。

だけど無理でござるよ。



拙者が薫殿の着物に手を伸ばすと………。







「うわぁーーーん!!」

「おろっ…。」



剣路…。

そんなに父ちゃんをいじめるでござるか…。



薫殿は起き上がり、剣路の元へ…。


またしても拙者は不発……。



「ふぅ。剣路、薫殿はお前の母でもあるが拙者の妻でもあるでござるよ。一人占めはいけないでござる。」

「剣心ったら!」


そう薫殿が拙者の頭を小突く。



「今日久しぶりに夜さぁ…。」


そう薫殿が微笑む。

拙者も笑って薫殿の頭を撫でる。


口づけをする瞬間にまた剣路が泣く。


「剣路〜…。」


拙者は今は剣路に押され気味でござる。
 
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ