物語-弐
□『 続・甘えんぼ 』
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「よしよし。」
「おろっ。」
薫殿が拙者を抱きしめて、頭を撫でる。
「か、薫殿!」
「どうしたのー?」
まるで剣路をあやす時のように、優しく言う。
…。
……。
こんなことされたら素直に甘えるでござる。
「薫殿〜。」
「なぁにー?」
「拙者のことをずっと放っておきすぎるでござるよ。剣路、剣路って、拙者もいるでござる。」
「ごめんね。」
「拙者だって薫殿に大好きと言って欲しいし、薫殿に抱きしめてもらいたいし、薫殿に接吻して欲しいでござる。」
「はいはい。私は剣心が一番大好きなのよ。愛してるわ。」
そう薫殿をギュッと抱きしめて、甘い唇を重ねて来る。
久しぶりの甘さに拙者は剣路が母乳を飲むように、薫殿の唇を吸う。
「んッ……ふッ……。」
「……………………。」
甘い。
薫殿の唇はこんなに甘い。
しばらくして唇を放すと薫殿はクスクス笑う。
「お父さんが息子にやきもちって、初めて聞くわ。」
「剣路ばかり可愛がる薫殿がいけないでござるよ。」
「もう甘えんぼねぇ。」
「剣路もいいでござるが、拙者だっているでござるよ。」
「剣心っ。」
そう薫殿はまた拙者に口づけをする。
唇や頬やおでこに。
くすぐったくて、愛を感じる。
たまにはこのように薫殿から積極的にされるのもいいでござる。
「母乳って…、どんな味でござるか?」
「さぁ?解らないわよ。」
急に真顔で尋ねる拙者に驚く薫殿。
「少し味見を…。」
「ちょっと!」
そう言って、拙者は笑顔で薫殿を寝かす。
今度は立場が逆転。
薫殿はバタバタと抵抗する。
だけど無理でござるよ。
拙者が薫殿の着物に手を伸ばすと………。
「うわぁーーーん!!」
「おろっ…。」
剣路…。
そんなに父ちゃんをいじめるでござるか…。
薫殿は起き上がり、剣路の元へ…。
またしても拙者は不発……。
「ふぅ。剣路、薫殿はお前の母でもあるが拙者の妻でもあるでござるよ。一人占めはいけないでござる。」
「剣心ったら!」
そう薫殿が拙者の頭を小突く。
「今日久しぶりに夜さぁ…。」
そう薫殿が微笑む。
拙者も笑って薫殿の頭を撫でる。
口づけをする瞬間にまた剣路が泣く。
「剣路〜…。」
拙者は今は剣路に押され気味でござる。