物語-弐
□『 悪巧み 』
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「ん……。」
拙者が買い物から帰ると、縁側で薫殿と左之が仲良く並んで寝ていた。
このように暖かく天気も良いと、昼寝をしたくなる気持ちもわかる。
可愛い寝息をたてる薫殿と、荒いいびきをかく左之。
まるで二人を表すかのようである。
「二人とも、可愛いでござるな。」
そう声を抑え笑う。
少々羨ましいでござるが、ほのぼのとする雰囲気でござる。
「拙者も掃除が終わったら混ざるでござるかな。」
二人を起こさないように歩こうとすると、「んん……。」と色っぽい寝息をたて、薫殿が寝惚けているのか左之に寄り添う。
「……寝惚けているでござるからな。」
笑って流そうと思っても、その姿を見続けてしまう。
左之は薫殿の触り心地がいいのか、薫殿を片手で包んでいく。
「寝惚けているだけでござる……誰にでもあるでござる……。」
きっと今の拙者の笑顔は引きつっているに違いない。
「うふ……。」と薫殿が嬉しそうに笑う。
「……。」
静かに二人に近付き、左之の手を薫殿の着物の胸に持っていき少しはだけさせる。
速さからか二人は気づかない。
拙者にかかれば、簡単なものでござる。
「お仕置きでござる。」
ニコリと笑い、拙者は次の作業に取りかかる。
「薫殿?左之?」
何も知らないように、大きな驚いた声を出す。
「風邪をひくでござるよ。」
今度は冷たく言う。
「えぇ?」
「なんだぁ?」
二人が眠そうな声で返事する。
そして、薫殿は自分の着物が左之の手によりはだけているのを見て悲鳴をあげた。
「ば、馬鹿!俺が嬢ちゃんに欲情するねぇだろ!」
「現行犯じゃない!変な夢でも見てたんでしょ!馬鹿!」
薫殿が身の回りのものを左之に投げつける。
それをかわしながら左之は走って帰って行った。
「剣心……?ごめんね?」
「あまり良い気はしないでござるが、拙者は薫殿を信じているでござるからいいでござる。」
「左之助、きっと助平な夢見てたに違いないわ。しばらく出入り禁止よ。」
鼻息を荒くして怒る薫殿。
拙者の作戦通りでござる。
「何だか、剣心嬉しそうね?」
「そんなことないでござるよ。内心、少しは怒ってるでござる。」
「本当にごめんね。今日は何でも言うこと聞くわ。」
「本当に何でもでござるか?」
「えぇ。」
「夜が楽しみでござる。」