物語-弐


□『 天の川を越えて 』
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「剣心、今日晴れてよかったね。」

「そうでござるな。」


二人。

縁側に座って見事な星空を眺める。

今日は七月七日。

天の川は晴れた今日、とても綺麗に見ることができた。

庭には小さな笹の葉が揺れる。

笹の葉に結ばれた願い事はもう二つしかない。

左之助の願い事、弥彦の願い事。

もうそれは去年までの話。

少し寂しく感じるけど。

こんなに素敵な星空の下。

剣心と二人でいられることが嬉しくて嬉しくて。



「ねぇ、剣心。」

「なんでござる?」


気持ちのいい風と綺麗な星空に。

いつもより満足そうに微笑む剣心。


「一年に一回しか会えなくて、彦星と織姫は寂しくないのかな?」

「そうでござるなぁ。」

「私は嫌だわ、そんなの。」


彦星と織姫の話なのに。

私は自分のことに置きかえて、考えていた。


剣心に一年に一回しか会えなかったら……。


その間に、

もし剣心が病気になったら大変じゃない。

もし剣心が誰かに告白されたら大変じゃない。

いつもみたいに一緒に散歩も買物も、毎日行けない。

そんなの私はたえられない…。


 


色々考えて寂しくなる私の肩を、剣心は優しく抱き寄せる。


「薫殿は優しいでござるな。」

「別に……。」


すぐ近くにある顔。

それと今日みたいな日。

いつもよりドキドキする。


「拙者も、彦星の立場なら寂しいでござるな。」

「そうよね!」


剣心も同じことを考えていたんだ。

そうわかったら嬉しくて、剣心の方を向く。



鼻と鼻がぶつかる。

剣心の真っ直ぐな目に顔をそらせない。

夜だからといっても。

満天の星空。

頬の色がわかられそう。



にこりと剣心が微笑む。

私のおでこに、おでこをちょこんと当てる。

優しく囁くように話し出す………。




「拙者は一年に一回など待たず、いつでもどんな時でも天の川を越えて薫殿に会いに行くでござるよ。」


そう言われた後に、ふわっと一瞬唇に体温を感じた。


「だから、向こう岸で待っていて欲しいでござる。」

「うん。いつでもどんな時でも待ってる。」



風がふわりと吹く。

今度は永遠に感じるほど、唇に体温を感じる。





笹の葉の願い事が揺れる。

私と剣心の願い事。

【ずっと一緒にいられますように。】



 
 

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