物語-弐


□『 初めての贈り物 』
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「薫殿、拙者は用があるでござるからしばらくは洗濯を頼みたいでござる。炊事は拙者がやるでござるから。」


ある日。

急に剣心はそんなことを言ってきた。


それから剣心の不審な行動は始まった。





「行って来るでござる。」

「行ってらっしゃい。」


剣心はここ何日か朝はやくに出掛けて、夕方に帰って来る。

何処で何をしているのかはわからない。

聞こうとする前にもう家を出ている。



「暇ねぇー…。剣心、何処行ってるのかしら。」


縁側で一人頬杖をついていると、左之助がやって来た。



「なんだ嬢ちゃん一人か。」

「左之助。剣心、最近毎日朝はやくに出掛けて夕方に帰って来るのよ。」

「いったい何の用なんだ?」

「わからないの。言わないし、私も聞く前に行っちゃうから。」

「別の所に女いるんじゃねぇのか?」

「えぇー。」

「嬢ちゃんより色気のあるいい身体した女の所だよ、きっと。」

「まったくもう!」


そう左之助を睨む。

慌てて左之助は「冗談だよ。」と言って、しばらく話したら帰って行った。



それにしても…。


「気になるわ。今日帰ってきたら聞いてやる。」






 




「ただいまー。」


夕方になり、剣心はいつも通りに帰ってきた。


「ねぇ剣心。」

「なんでござるか?」


一緒に夕食を作りながら、さりげなく剣心に聞いてみる。


「毎日何処に行ってるの?」


なんだか甘い香りがするわね。



それより。

話だわ。



「今日は左之助と話をしていたでござる。」

「今日?左之助と?」

「あぁ。男同士、話したいこともあるでござる。」

「あっそう。」

「あとは拙者がやるでござるから、先に座って待っているでござる。」

「ありがとう。」





勢いよく座り、ついだお茶を一気に飲む。


左之助と話していたですって…。

今日、左之助は私といたのよ?!



怪しい。


それに剣心からする香りは考えてみたら女物の香水。



もしかして……。


「浮気……?!」




 
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