物語-弐


□『 秘密の二人 』
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「私……好きなの。」

「俺も実は好きなんだよ。」

「剣心には悪いけど……。」

「あぁ。剣心には悪いーけど……。」


買物から帰ると居間の障子が閉まっている。

完全な密室。

玄関で「ただいま。」と言ってみたが返事はなかった。



そして閉まってる障子を開けようとしたら先ほどの会話が聞こえてきた。




拙者には悪い…。


何より好きって確かに二人は言い合っていたでござる……。



拙者の頭の中には良からぬことが。


意を決して、開けるでござる。



「ただいま。」

勢いよく開けると二人が仲良くくっついて机の前に座っている。


「剣心、帰ってきてたの?」

「先ほども言ったのだが聞こえていないみたいでござるな。」

「す、すまねぇな!」


明らかに慌てている。

そして、二人は離れようとしない。



「ちょっと私部屋に行くわね!」

「送ってってやるよ!」


また二人くっついて薫殿の部屋に行った。



………怪しい。



「剣心、薫知らねぇか?」

「さっき部屋に戻ったでござるよ。」

「じゃあこの豆腐は剣心に任せるな。」

「豆腐でござるか?」
 
「おう。俺が帰ったら豆腐を頼まれたんだよ。左之助だっていたのによ。疲れてんだぜ、こっちは。」


弥彦は厄介払いされたでござるか。




「…薫殿と左之が怪しいでござるよ。」

「怪しいってどんな風にだ?」

「好きと言い合っていたり、拙者には悪いなど言っていたでござる。」


大人げなく、拙者は弥彦に相談していた。

情けない…。


弥彦は腹を抱えて笑い出した。


「薫と左之助が好き同士なわけねぇよ!あいつは剣心にベタ惚れじゃねぇかよ!
薫と左之助が好きなんて天と地がひっくり返るぜ。」

「そうでござるな。要らぬ心配をしていたでござる。」



確かにそうでござる。

薫殿と左之が男女の好きになるわけないでござる。

仔犬がじゃれ合っているような二人でござるからな。
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