物語-弐
□『 花眼 』
1ページ/2ページ
「もう春なんだね。」
「そうでござるな。」
家までの帰り道。
桜の木が目を染める。
「剣心、とっても笑顔ね。」
薫殿に覗き込まれそう言われる。
桜はあまり好きにはなれない…。
そう言ったものの、こんなに暖かい天気と心地好い春風。
そこにある淡い桜がとても綺麗に思う。
「春って、暖かくて気持ちいいわよね。」
「あぁ。散歩に出るのが楽しみになるでござる。」
薫殿が少し先を歩く。
ふわっと風が拙者達を撫でていく。
ひらひらと舞う桜の花びらが薫殿の髪に落ちる。
「花びらが…。」
そう手を伸ばして取ると、ありがとうと桜色に染めた頬で微笑む。
「本当に綺麗だわぁ、桜って。」
「知ってるでござるか?そのようなことを何と言うか。」