物語-弐


□『 にらめっこ 』
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「剣心、にらめっこしましょう。」

「にらめっこでござるか?」


私の唐突な言葉に、首をかしげる剣心。


「うん。いいでしょ?」

「いいでござるよ。」




そう笑顔で私に言う。


「いくわよ。にらめっこしましょっ、笑うと負けよっ、あっぷっぷ!」



頬を膨らませて、剣心と見つめ合う。



剣心は余裕な顔で私を見つめる。

目が優しくて。

髪がさらりと風に揺れ。



そんな剣心と見つめ合っていたら、だんだんと顔が火照る。


そんな自分に気づいて、目線を剣心から外す。






「…ははっ。」


クスっと剣心が笑った。



「今笑ったわよね?」

「あぁ。」

「剣心の負けよ!」

「拙者の負けでござるよ。」


尚も剣心はクスクスと笑う。


「私、そんなに変な顔してた?」

「いや。可愛くて、つい。」

「顔を膨らませてただけよ?」

「徐々に赤くなっていったのが可愛かったでござるよ。」



剣心が私の頬を撫でる。



「どうして急ににらめっこなど思い立ったでござるか?」

「えっ?んとね…。」


理由……言おうかな。

でも、言ったら剣心笑うかな。



「実はね。剣心の顔じっくり見たかったの。」

「顔でござるか?何処か変でござるか?」

「ううん、普通よ。なんて言うか好きな人の顔って、ずっと見つめていたいじゃない……。」


そう言った後に、言った自分が恥ずかしくなって手で顔を覆う。





その手を優しく剣心が掴む。

剣心の方を見ると、いつも以上の笑顔を私に向ける。



「言ってくれれば、ずっと見つめていたでござるよ。」

「恥ずかしくて言えるわけないじゃない。」

「今言ったでござろう。」

「そうだけど……。もうバカっ。」



心臓がドキドキする。

顔が火照ってる。




だけど剣心から目が離せない。


「可愛いでござるなぁ。」


剣心が抱き寄せる。


「子供扱いしてるでしょ。」

「してないでござるよ。」


そう言いながらも剣心は頭を撫でる。



「もうっ。剣心のバカっ。」

「なんでもいいでござる。」


にこにこ笑いながら、強く包み込む。



優しくて。

温かい。


私だけの居場所。




「剣心。愛してるわ。」


そう見つめ微笑む。

それに応えて剣心も微笑む。



「拙者も愛してるでござるよ。」



今度は私が力強く包み込む。


「またにらめっこやるでござるよ。」

「うん。絶対よ。」








 
 

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