物語-弐


□『 雪 』
1ページ/1ページ

「薫殿、もっとこっちへ。」

「うん。」


雪が降る中。

私達は買物。

一つの傘の中、手を繋ぎ温め合うように寄り添い歩く。


剣心をちらっと見ると真っ直ぐ前を見て歩いている。

私の視線に気づいてか、剣心はこっちを見て微笑む。


「雪、止まないね。」


私は恥ずかしくなって、空気を切るように前を向き話し出す。


「そうでござるなぁ。」

「綺麗だけど寒いわ。」

「それなら……。」


剣心は繋いでいた手を放し、私の肩を抱き寄せた。



「これなら温かいでござろう?」


そうにこりと微笑む。


「うん。」


私は恥ずかしくて、つい素っ気ない返事をする。



「いつまでしてるの?」

「さぁ。いつまででござるかなぁ。」


剣心はずっと放さない。

温もりが冷えた身体を温める。


それを伝えるように肩にある剣心の手にそっと手を添え家路をゆっくり歩く。





「剣心、もっとゆっくり歩いてよ。」

「速かったでござるか。すまない。」

「ううん、ゆっくり帰りたいの。」

「寒いでござろう?」

「温かいわ。剣心の傍にいるから。」


そう剣心の胸に埋まる。



「風邪ひいても知らないでござるよ。」

「大丈夫。」


剣心は傘を捨て、私を優しく包み込む。


「温かい。」

「薫殿も温かい。」




たまには雪もいいね。

いつもより、貴方の温かさを感じるから。








 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ