物語-弐


□『 男らしく 』
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「薫殿。」

「なにー?」



左之と菓子を食べている薫殿に渡しに行く。


「……ありがとう…。」



薫殿宛ての恋文を渡すのが、最近の週間になっている。

薫殿はその度に迷惑そうな顔をするが、拙者が処理していいものではないから渡す。



「ちょっと部屋で書いてくるわ。」



そう薫殿は席を立つ。

拙者は薫殿がいた場所に座る。


「剣心、お前女心ってのが解ってねぇなあ。」

「左之が解ってるとは到底思えないでござるよ。」


左之が菓子を食べながら話す。


「お前よりは解ってるぜ。どうしたら女が喜ぶかも悲しむかもよ。」

「ほぉ。」


やれやれと思い、軽く聞き流す。


「そんなんじゃ、嬢ちゃんに愛想尽かされるぞ。」

「何故でござる?」



拙者は菓子を食べる手を止め、左之を見る。

左之は勝ち誇った顔で拙者の肩を組む。



「いいか。まず男からの恋文は破り捨てる。」

「それは男にも薫殿にも失礼でござるよ。」

「そんな優しいこと言ってんじゃねぇよ。女ってのは好きな奴からそんなの渡されたら辛いだろ。」

「そうでござるか?」

「そうだよ。私が他の人好きになってもいいのって思うんだよ。」

「そ、そうか。」


いつの間にか左之の話に賛同してしまう。


「もう少し大胆になれねぇのかよ。」

「大胆にで…ござるか?」

「おう。ござるなんざ言わないでよ、こっち来いとかよ。」

「命令ではござらんか?」

「バーカ。これがいいんだよ。強引に抱いて接吻。押し倒しちまえよ。」

「バ、バカ!そんなことできるわけないだろ!」


左之は本当にバカでござるな。

どうしようもない。



「それが甘えんだよ!案外、嬢ちゃんもそんな剣心を待ってんじゃねぇか?」

「……そうでござるか?」

「おう。試してみろよ、たまには違った所見せてやれ。言葉遣いに気をつけろ、あとは薫って呼べ。」



なんだかんだで左之に流されて、拙者は薫殿の部屋の前に来ている。



いつもと違う拙者…。

言葉遣いを直して、薫でござるか…。



違う。

薫にする、だ。




 
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