物語-弐
□『 素直じゃない二人 』
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「剣心、嬢ちゃん今日は恵の所に泊まるらしいぞ。」
「恵殿の所にでござるか?珍しい。」
「おう。話し込んでるみたいでよ。」
「左之が伝言を頼まれたでござるか?」
「さっき会ったからな。じゃあな。」
夕方、左之が突然訪ねてきた。
そして薫殿が恵殿の所に泊まると伝えに来た。
あの二人がそんな込み入った話をするのは珍しいでござるな。
仲が良いならいいことに変わりはないでござるがな。
しかし、二人が仲良く話しているのを想像すると笑えるでござるな。
「弥彦。」
「なんだ?」
「今日は薫殿は泊まりでいないでござるから、夕飯食べるでござるよ。」
「薫の奴、何処行ったんだ?」
「恵殿の所らしい。」
「珍しいなぁ。」
弥彦もそう思うでござるなぁ。
多く作ったものを心配していたが、弥彦が全部たいらげた。
風呂から上がり、縁側に座る。
薫殿のいない家は寂しい。
冬の静かな冷たい空気が拙者を独りにする。
「薫殿はちゃんと布団に入っているでござるかなぁ。」
そんな心配をしながら、今日は少しばかり遅く寝付いた。