物語-弐
□『 痕跡 』
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茜空の下。
私は剣心と家路を急ぐ。
季節はもう冬。
この空が黒くなるのは早い。
家に着くと、門の前に見知らぬ男が一人。
私達を見つけると、にこにこ笑いながら歩み寄ってくる。
「お客さんですか?」
そう尋ねると笑顔で男は応える。
「あっ、こんばんは。神谷薫さん。それと…。」
男は笑いながら目付きを変える。
「緋村抜刀斎さん。」
剣心も目付きを変える。
「お主は…。」
「あっ、今は緋村剣心さんでしたよね。すみません。」
クスクス笑う。
剣心が逆刃刀を掴み、私を後ろに庇う。
「嫌だなぁ。僕が何者かも解らないのに斬ようとするんですか?不殺は嘘だったんですね。」
「何者か解らずとも、お主からの殺気は解る。」
「あは。見破られちゃいましたか。さすがだなぁ。」
「誰だ。」
「秘密です。今日は挨拶に来ただけですから。」
男はお辞儀をして、いつの間にか暗くなった世界に消えていく。
剣心は後ろ姿をずっと見ている。
私はそんな剣心を見つめる。
私の視線に気付いてか、剣心は手を握る。
そして優しい笑顔を向ける。
「家に入ろう。」
「うん。」