物語-弐
□『 恋は愛へ 』
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彼の事。
始めの頃は追うのに精一杯でした。
彼は人を惹き付ける。
だけど何処かで人を引き離す。
それでも私は彼の傍に居たい。
この気持ちに名前を付けるなら、恋≠ニ今なら言える。
だけど、あの頃の私には恋≠ネんて解らなかった。
胸で疼く気持ちも、胸で高鳴る気持ちも、私は知らないでいた。
…ううん、きっと怖かったの。
認める事が。
彼は流浪人。
いつかは去り行く人。
だから私は知らないふりをしたの。
でも、解ったの。
彼が去り行こうと、私が追えばいい。
ここをいつでも帰る場所にすればいい。
それは何処か独占欲にもいた、私の我が儘。
だけど、彼は帰ってきてくれた。
いつだって。
笑顔と優しさを持って。
そして愛を持って。