物語-参
□『 逢いたい 』
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「私ね。」
隣に薫殿が座っている。
穏やかな日々が戻った。
京都、志々雄との長い長い闘いが終わった。
隣に在るのは守りたい笑顔。
「もう一生剣心に逢えないと思ったの。置いて行かれた時。」
「すまないでござる。」
「謝らないで。別に責めてるわけじゃないわ。」
そう薫殿はクスクスと笑う。
「剣心の気持ち、解るもの。」
風が通り抜けていく。
幕末の血の臭いが身体を包み込んでいこうとする。
「剣心と出逢ってからのこと、ずっと思い返していたの。」
薫殿の言葉で、その幻がかき消される。
拙者の身体を現在包み込むのは愛しい人の香り。
「出逢った日から、きっと・・・ううん、その瞬間から剣心のことをもう守りたいと思ったの。」
「おろ。拙者、そんなに弱弱しく見えたでござるか。」
今度は拙者がクスクスと笑う。
「えぇ、とっても。華奢で女の子みたいだったもの。」
「それは言いすぎでござるよ。」
薫殿が意地悪を言う。
お互い笑い合う。