物語-壱

□『 留守番 』
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「あぁー、暇だわ…。」


剣心が署長さんに頼まれて出かけてまだ少ししか経ってない。

しかも、夜遅くまで帰って来ない。

弥彦は宴会が入っているからと赤べこに泊まり込み。


「一人って、こんなに暇だったっけなぁ…。」



剣心が家に来て、弥彦が家に来て。

三人で暮らしてたから、一人でどうやって暮らしてたか忘れちゃったわ…。



「稽古でもするかな。」

胴着に着替えて、道場に向かう。


「やっぱり最近身体鈍ってるなあ!えいっ!」

「おぉー、やってるなぁ。」

「左之助。」

「今日一人なんだろ?来てやったぜ。」

「誰から聞いたの?」

「弥彦だよ。心配してたぜ。」

「別に大丈夫なのに。」

「今日やっかいになるぜ。文句言うなよ。」


左之助なりの優しさについつい笑う。


「じゃあちょっと稽古の相手してよ。」

「よしっ、俺に当ててみな。」




しばらく左之助と稽古をした。

だけど、これがなかなか当たらない。

さすが剣心が一番信頼している男だわ。

私は汗をかいているって言うのに、左之助は汗ひとつかかないで余裕の表情。


「もうっ!なんで当たらないのよ!」

「簡単に俺が当てられるかよっ。」


すかした所で左之助にデコピンされ、技ありと取られた。



「はぁ、疲れたわ。」

「こんなんじゃ、師範代が泣くぞ。」

「うるさいわねぇ!」

「それより腹減った。なんかねぇの?」

「じゃあ私が…。」

「嬢ちゃんの料理以外でな!」

「どういう意味よ!」

「剣心も作って行けばいいのによ。しゃーねぇか、俺が作ってやるよ。」

「あんた作れるの?」

「嬢ちゃんよりはな。」



そこまで言うなら、左之助のお世話になろうじゃないのよ。





 
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