物語-壱

□『 やきもち 』
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「すみません。」

「おろ?」

「ここに行くにはどうしたら?」

「それだったら…。」



さっきから何人目?

剣心にばっかり聞いて。

女の私も隣にいるんですけど。

あまつお礼にお茶をなんて誘う人まで。

剣心は強引に言われると断れないんだから…。


凄腕の流浪人がいると評判になって、子供だけじゃなく女の人にまで人気が出た。

いつか私の傍を離れちゃうんじゃないかって心配になる。


「ぜひお礼を。」

「いや、しかし拙者は…。」


なんで断れないの?

私がいるじゃない。

つい不機嫌になって、うつ向く。

情けないな。


そしたら剣心が頭をぽんぽんと叩いた。


「拙者にはこの女性(ひと)がいるでござるから、遠慮したい。気持ちだけ受け取るでござるよ。」

にこっと笑って、剣心は私の手をとって歩いて行く。



「剣心、よかったの?あの人綺麗だったよ。」

「薫殿は拙者が他の女性と何処かへ行ってもいいでござるか?」

「別に…剣心の勝手だもん…。」


そう言う私は可愛くない。

でも剣心は笑って、繋いだ手を強めた。



「拙者は薫殿がいいでござる。薫殿も拙者がいいでござろう?」

「…そうね。」



私はね、ずっと繋いだ手を放さないよ。

剣心が大好きだもの。




「薫殿もやきもち妬くなんて可愛いでござるな。」

「もうっ。」





 
 

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