物語-壱
□『 体温 』
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ここは…拙者が京都に行く日に薫殿に別れを告げた場所…?
螢…。
あっ、薫殿…。
『薫殿。』
『剣心。』
『帰ろう。いつの間にかこんなに暗い。』
手を伸ばすのに、どんどん遠くに行く彼女。
『剣心…さようなら。』
━━さようなら。━━
「待て!」
目をあけると天井。
いつもの寝室。
「夢…か…。」
そうだ拙者は久しぶりに風邪をひいて寝ていたんだ。
風邪か…本当に久しぶりだな。
幸せに浸り油断し過ぎたなと笑みが溢れた。
あの日薫殿はこんな風に気持ちを痛めたのか。
泣かせた罪はどうしたらいい。
「薫殿は何処へ行ったのだろうか…。」
いつの間にか独りが耐えられなくなった。
拙者が幸せを祈ってさようならを告げた時も、薫殿は追いかけてくれた。
どんな危険なめにあっても、必ずここで待っていてくれる。
おかえりと笑ってくれる。
そんな君を求めずにはいられない。
気付けば布団から出て、家の中で薫殿を探していた。
会いたい。