novel

□甘味とオレ
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バレンタインにチョコレートをあげるのなんて

生まれて初めてだった










「んぅ…何かいびつな形…ι」


今日のオレは果てしなくらしくない。

大好きなヤツを喜ばせようと、懸命にチョコレートを溶かし固めている。

ハートの型に流しこんだそれは綺麗な形になるはずだったのに…


「何で失敗すんだよぉ…!!」


慣れない手付きで行為をくり返していたが、
結果は変わらずダメだった。

もう幾度となくはいたため息と、無残に飛び散っているチョコレートを見てイラつく。








――めんどくせ…








オレは頬に付いたチョコレートを袖で拭うと
湯せんにかけっぱなしのボールを持ち上げ、机の上に放置してしまう。



あ〜あ…
ハスタを驚かせようと思っていたのに何でこうなってしまうのか?

自分の不器用さを果てしなく呪った。




『甘味なニオイに誘われて来たら緑の人はっけーん』




膝を抱えて丸くなったオレに絡むように抱きついてきたのはオレの大好きなハスタだ。

相変わらずの脳天気さに更に腹が立つ。



こいつは何も悪くはないのに…



「うっせーな、あっち行けよ!」


掴まれた腕を振りほどきながら逃げようとするスパーダ。

しかし、それを見通したのだろうかハスタは彼の華奢な躯を押さえつけ、動けないようにした。


『あー?お前ダレに言ってんだァ。大好きでforeverな人に言う言葉じゃないピョロよー』


(何がforeverだっつの )

そう心の中でツッコミつつ、オレは自分でダメにした贈り物へと指をさす。


「あんたに…作ってた。だけど、失敗した…」


今にも零れそうな雫を瞳に浮かべるスパーダの頭を、ハスタの手が優しく滑る。


『オレはアレよー、甘いモン何でも平気だポン☆』

「へっ、何言ってんだか全然わかんねぇ…///」


たまに見せるハスタの優しい微笑み

それに反応して紅に染まる顔を隠すようにおおえば…











『可愛いカオすんなよなぁー、スパーダさん…だったっけ?』




すぐに退かされて

ギュッと抱きしめてくれる。




「っ/// バーカ!」




ハスタが一緒にいると、それだけでもう

チョコレートどころか

オレの頭まで溶けてしまいそうだ///




それでも大好きな人だから

今日ぐらいはいいかな?




end




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