Novel 1st

□それゆけ運動会 中編
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続いて鷹士がやってくる。

「お〜い!」

「お兄ちゃんは何?」

「見せてみろ」

鷹士の持つお題の紙を覗き込むヒトミと龍太郎。

「一ノ瀬行くぞ」

鷹士は蓮に呼び掛けた。

「は?何で俺が」

「いいから来い!」

「なっ!」

鷹士は強引に蓮の腕を引っ張ってゴールへ向かった。

「…それでお題はなんだったワケ?」

「えっと……」

雅紀がヒトミに聞くが黙ってしまったので代わりに龍太郎が答える。

「“ツンデレな人”だとさ」

「へぇ?」

「ふふっ、じゃ蓮しかいないね」

綾人が楽しそうに笑う横で透が心配そうに呟いた。

「一ノ瀬先輩はツンデレの意味知らなそうだね」

「まぁ鷹士の頑張りで1番にゴールできたみたいだしいいんじゃないか」

ゴール地点を眺めて龍太郎が言った。

スタート地点では新しい組が走り出している。

「いよいよ剣之助だね」

「ねぇ颯大くん、なんか橘くん困ってない?」

お題の紙を拾った剣之助が顔をしかめて固まっている。

「橘!とりあえずこっち来いよ」

雅紀が大声で剣之助を呼ぶ。

剣之助はちらっとこっちを見て複雑そうに歩き始めた。

「橘くんお題はなんだったの?」

綾人が優しく声をかける。

「いや…その…」

「剣之助、紙見せてよ」

颯大がお題の紙に手を伸ばすと剣之助はサッと隠した。

「ちょっと剣之助?」

「せっ先輩っ」

剣之助が颯大を無視してヒトミに声をかける。

「なぁに橘くん、私が持ってる物かな?」

「そのっ…先輩に一緒に来て欲しいんスけど…」

俯きながら顔を赤らめて言う剣之助。

「わ、私?」

「っス」

「わかった」

頷くとヒトミは剣之助の手を取った。

「1番になろうね!」

ヒトミの言葉に照れながら剣之助は頷く。

「じゃ、行くッスよ」

二人手を繋いでゴールへと走って行った。

残った者たちはポカーンと見守るばかり…。

「……剣之助のお題、気にならない?」

颯大が振り向いて声をかけた。

「気になるな」

「気になる」

「気になるね」

「気になるよ」

龍太郎、雅紀、綾人、透…次々に同じ言葉が飛び出す。

「だよね!戻ってきたら聞かなくちゃ」


借り物競走が終わり楓たち一行が戻ってくる。

「ねぇ、剣之助のお題は何だったの?」

「な、なんだよ深水」

薮から棒に聞く颯大に剣之助はうろたえた。

アヤシイと颯大が睨む。

「何だっていいだろ」

「良くないよ!気になるじゃん」

「いいからほっとけよ」

ギロリと剣之助に睨まれて颯大はさすがに黙り込む。

「なんだよ剣之助のケチ」

頬を膨らまして颯大は顔を背けた。

他のメンバーも気になってはいたがあまりの剣之助の気迫に声をかける事はしなかった。
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