Novel 1st

□可愛いひよこ
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可愛いひよこ・・・根性レベルをあげないと。


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「おめでとうございます!あなたが記念すべき当店10000人目のお客様ですっ」

軽快なクラッカーと鳴り響くベル、舞い散る紙吹雪に囲まれ剣之助はアイテムショップの入口に立ちつくしたまま目を白黒させていた。

「すごいね橘くん!おめでとう」

目の前にはなぜか同じマンションに住む一つ上の先輩、桜川ヒトミが目をキラキラと輝かせている。

「先輩…あの…?」

「私も今来たところなんだよ、だから9999番目だったんだ〜残念。それにしてもツイてるね橘くん!」

まだ状況が掴めない剣之助にヒトミは満面の笑みを浮かべた。

その背後から眼鏡の店員が紙袋を持って剣之助の側にやって来るとニコッと笑った。

「お客様には当店より粗品をプレゼントさせていただきます。どうぞ」

半ば強引に紙袋を手渡され剣之助は訝しげに眉をしかめる。

まるで怪しいものでも見る様に。

「わぁ、ねぇねぇ開けてみなよ」

「…っス」

ヒトミに促され紙袋の中身を取り出すとそれは…

「わぁ!可愛い!」

真っ先にヒトミが感嘆の声をあげる。

粗品とは手の平サイズのひよこのぬいぐるみだった。

「当店のオリジナルモデル“ラブリーひよこペア”のぬいぐるみです」

よく見ると男の子のひよこと女の子のひよこが寄り添う様にくっついている。

確かにラブリーという言葉がよく似合う。

正直に言えば剣之助には用のない代物だった。

「先輩にあげるっス」

ぬいぐるみをヒトミに差し出すとヒトミはグイッと押し返した。

「ダメだよ、せっかく橘くんが貰ったんだから」

「いや、男がぬいぐるみ貰っても…こーゆーの先輩のが似合うから」

剣之助がまたぬいぐるみをヒトミに差し出す。

「そんなことないよ、橘くんもひよこ似合うよ」

ヒトミはニコッと笑って言ったが剣之助の胸中は複雑だ。

「先輩…それ微妙だし」

「え、そうかなぁ似合うと思うんだけど」

素直に受け取らないヒトミに剣之助は奥の手をを使う事にした。

「先輩、ひよこ好きでしたよね?」

「そ、そうだけど…」

「これふかふかっスよ?」

「うっ…」

剣之助の手の平にあるひよこをヒトミは食い入る様に見る。

その好反応に剣之助はさらに続けた。

「すっげぇ柔らかいし」

「うぅっ…」

ヒトミの手がひよこに延びる、もう少しだ。

「触り心地最高っス」

「う〜…あぁ!やっぱりダメだよ」

伸ばした手を反対の手で押さえヒトミは我慢する。

剣之助は溜め息を着いた。

相変わらずなかなかの根性である。

「とにかくコレ…先輩に貰って欲しいんで」

「でも…」

「ハイハイ!お任せ下さい大丈夫です!」

剣之助とヒトミの間に先程の店員が割って入る。

「なんと、この“ラブリーひよこペア”は離れるのです」

店員が剣之助の手のぬいぐるみを掴み上げ

ベリッ!!

勢い良くひよこの男の子と女の子を引き離した。

くっつけたり離したり出来るものらしい。

それぞれのひよこをヒトミと剣之助に渡す。

「これで問題ないですね!では、どうぞお買い物をお楽しみ下さいませ」

店員は満足げに去って行った・・・。
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