Novel 1st

□それゆけ運動会 後編
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それゆけ運動会…勝負の行方

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「えっと…じゃあ私みんなの分もジュース貰ってくるね」

ヒトミが行こうとすると鷹士も続いて立ち上がった。

「兄ちゃんもついて行こうかなヒトミ一人じゃ大変だろうし」

「うん、ありがとお兄ちゃん」

兄妹仲良く並んで歩きジュースの配布所に向かう。

途中で近所のおじさんおばさんに捕まりなんだかんだと時間がかかってしまった。

配布所に着くとあらかた配り終えたのか空いていた。

「ヒトミちゃん、可愛いから一つオマケだよ」

配っているのも近所のおじさんでジュースを一つ多く渡してくれた。

「よかったなヒトミ」

「うん、おじさんありがとう」

そのままジュースを手提げ袋に入れて貰う。

ヒトミは半分持つと言ったのだか軽いからと結局全部鷹士が持っていた。

「あ、一ノ瀬さんだ」

戻る途中向かいから蓮が歩いてくる。

「遅くなったから様子見にきたのかもしれないな」

「お〜い一ノ瀬さ〜ん!っうぎゃっ」

ドシンッ

ヒトミは蓮に手を振った拍子に足元の石に躓き勢いよくスッ転んだ。

その姿に蓮も気付く。

「ヒトミ!」

「桜川っ!」

慌てて鷹士と蓮が駆け寄るとヒトミはむくりと起き上がった。

「あはは、転んじゃった…イテテ」

「何やってんだお前は」

蓮が呆れて溜め息をつく。

「ヒトミっ怪我してるじゃないか!大変だ!」

思い切り前のめりになったせいか腕やら足やら擦りむいていた。

「たいしたことないよお兄ちゃん」

「たいしたことないわけないだろ!!一ノ瀬!これ頼む」

「えっ」

鷹士は蓮にジュースの袋を押し付けるとヒトミを抱え上げた。

いわゆるお姫様抱っこスタイルで。

「わわっ!ちょっ!お兄ちゃん」

「傷はすぐに洗わないとバイ菌が!一ノ瀬、先に戻って先生に救急箱出しといて貰ってくれ持って来てたから」

言い終わるか終わらないかのうちに鷹士はヒトミを抱えたまま水洗い場に走って行った。

一つ溜め息をつくと蓮は来た道をゆっくりと戻った。


ヒトミ達がシートに戻ると龍太郎が救急箱を開いて待ち構えていてくれた。

「ったく、こんな傷つくるなんてガキかよ」

ヒトミの擦りむいた両腕両足を見て龍太郎が文句を言いながら傷口に消毒液をかける。

「すみません…って先生染みる〜!」

「自業自得だ黙れ」

「冷たいなぁ先生、ヒトミは怪我人なんだから優しくしてくれよ」

「っとに…お前は妹に甘すぎんだよ」

そう言って消毒液を染み込ませた脱脂綿をピンセットで掴み傷口の汚れを丁寧にとる。

「ギャー!先生痛い痛い!」

あまりの痛さにヒトミは悲鳴を上げ涙目になった。

「ヒトミちゃん…大丈夫?」

「ヒトミ先輩、頑張って!ちょっと保健医、本業だろ痛くない様に出来ないわけ?」

鷹士と一緒に手当てを見守っていた透と颯大が言う。

「ったくやりずれーな」

舌打ちして前髪を書き上げる龍太郎。
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