Novel 1st

□それゆけ運動会 前編
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それゆけ運動会・・・はじまりは突然に


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雲一つない晴天。

広いグラウンド。

弾ける闘魂。



「よし、みんな集まったな!今日は優勝目指して頑張るぞ!おー!」

鷹士が掛け声と共に拳を上げる・・・が、辺りはシーンと静まりかえっていた。

「なんだなんだお前たち!ノリが悪いぞ」

「みんなごめんね…無理言って」

ブツクサ言う兄をよそにヒトミがペコリと謝る。

この度、桜川鷹士の管理するマンションの住人は市内のグラウンドの一角にシートを敷き陣取っていた。

それぞれ鷹士に渡された青いハチマキを身に着けている。

「ヒトミ先輩は気にしないで!」

颯大がヒトミの手を取って励ました。

「なぁ桜川、地区の運動会って毎年やってんの?」

雅紀が辺りを見回して問いかける。

グラウンドには町内会のメンバーが続々と集まって来ていた。

「あ、うん。そうなの、去年も透くんと先生は出てくれたんだよね」

ニコッと笑って二人に目をやるヒトミ。

透と龍太郎は小さく頷いた。

「あぁ、あん時も鷹士に強制参加させられたんだよな」

腕を組んで思い出す様に龍太郎はしみじみと言う。

「去年は僕がみんなの足引っ張っちゃって最下位になっちゃったんだよね…」

気まずそうに俯く透の背中を龍太郎が叩いた。

「そんなことねぇよ、むしろ足引っ張ってたのはコイツだ」

そう言って指差した先にはヒトミがいた。

「あはっ…すみませんでした」

苦笑いするヒトミの前に鷹士が割りこむ。

「先生ヒトミをいじめるなよ!ヒトミは一生懸命頑張ってたじゃないか!あの時のヒトミも可愛いかったなぁ…」

一年前を思い出す鷹士の姿に龍太郎は溜め息をついた。

「シスコン馬鹿はほっとくとして…」

「シスコンじゃないぞ!」

「……まぁ、木野村も桜川も見違える程痩せたワケだし?人手も増えたコトだから今年は結構勝てんじゃねぇの?」

「この運動会って優勝すると何かあるんスか?」

プログラムを見ながら剣之助が聞いた。

「うん、それぞれの種目でも粗品が貰えるんだけどチーム優勝すると商店街の割引券が貰えるの」

ヒトミが楽しそうに答える。

「俺にはどうでもいい事だ、できれば辞退したいんだが」

蓮がさも面倒くさそうに言う。

「一ノ瀬さん…」

悲しそうに呟くヒトミの横に綾人がやって来る。

「蓮、たまにはこんな息抜きも良いと思うよ?でも無理強いは出来ないしね」

「神城?」

「蓮が出ないなら僕が代わりに頑張ろうかな?」

ニッコリ笑ってヒトミにウインクする綾人の言葉に蓮が目を見張る。

「おい神城、無茶するな」

「じゃあ蓮が出てくれる?」

「…わかった。俺が参加するからお前はおとなしくしてろ」

「ふふっ…蓮は優しいね」

深々と溜め息をつく蓮に綾人は小さく笑った。

「ありがとうございます一ノ瀬さん!」

「ヒトミちゃん、ごめんね…僕は力になれなくて」

綾人がすまなそうに言うとヒトミは勢い良く首を振った。

「そんなことないです!私、神城先輩の分まで頑張りますから見てて下さいね!」

ヒトミがガッツポーズを取る姿に綾人は微笑んだ。

「うん、応援してるよ」
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