桜日記
□たくさんの素敵
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ED後
「おはようございます総司さん」
すやすやと眠る姿に目を細め、優しく肩を揺すれば小さな子供のように布団に潜ろうとする。
くすっと小さく笑ってから千鶴は耳元に顔を寄せた。
「朝ですよ。もうご飯の準備が出来るので起きてください」
「う…ん、おはよう…もう朝?」
「はい、朝ですよ」
眠そうに目をこすりながらも総司は体を起こして伸びをする。
外からは明るい光が差し込み室内を照らしていた。
遠くで聞こえる小鳥の囀りが心地良い。
千鶴は頬笑みながら着替えの着物を差し出した。
それを受け取ろうとして出した手を総司はそのまま伸ばすことにしてぎゅっと千鶴の体を抱きしめた。
二人で暮らすようになってからこんな事は日常茶飯事で他の人の目がないせいか千鶴も最初は恥ずかしがっていたものの甘んじて受け入れている。
「千鶴ちゃんは今日も可愛いね」
「ふふっ、ありがとうございます。総司さんは今日も素敵ですね」
「ありがと、でも格好良いとかじゃなくて“素敵”なんだ?」
「はい」
「どうして?」
少しだけ抱きしめる手を緩めて目の前の少女の顔を覗き込む。
コツンと額が触れ合うと千鶴は照れ臭そうに目を逸らした。
「どうしてって…総司さんはいつも格好良くて頼もしくて、でも時々可愛らしくて優しくて…とにかく素敵だからです」
「ははっそれ全部ってこと?」
「…はい」
「嬉しいな。千鶴ちゃんもいつも可愛くて面白くて綺麗で素敵だよ」
そう言って軽く額に口づければ、千鶴は少しだけ複雑そうに見上げてくる。
「…“面白い”…は素敵なのですか?」
「もちろん!あ、でももう一つ」
いたずらを思いついた時みたいな楽しそうな顔をして総司は片目を瞑ってみせた。
なんだろうと千鶴が首をかしげているとその耳元に甘く囁く。
「僕にだけ見せる夜の艶っぽい君も…素敵だよ」
その言葉と耳にかかる吐息に千鶴の顔がみるみる赤く染まって行った。
「な…何言ってるんですか!からかわないでくださいっ」
「からかってなんかないよ」
「ううっ…絶対からかってます…」
「そうそう、そんな風に怒った君もとっても素敵だよね」
チュッと軽く口付ければ千鶴の表情が拗ねたように変わる。
それすらも愛しいとばかりに総司はもう一度口付けた。
君と僕を包むたくさんの素敵。
End
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二人はいつまでも穏やかに幸せであればいいと思います。