Bleach Novel

□その手の行方
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『その手の行方』・・・だから君にはかなわない


*・*・*・*・*

「黒崎くんってズボンのポケットに手を突っ込むの好きだよね」

夕暮れの帰り道。

一歩後ろを歩く井上が神妙な顔をして呟いた言葉に足を止めた。

「そうか?」

確かに俺は今鞄を持っていない方の手をポケットに突っ込んでいる。

でもそれは別に好きとかじゃなくてなんとなくっていうか癖みたいなものだ。

井上はじーっとその手の突っ込まれたポケットに視線を注ぐ。

「どれどれ?えいっ」

「おわぁ!ちょっヤメッぎゃー!」

何が起きたか一瞬わからなかった。

背後から井上は俺のズボンのポケットに手を突っ込んでいる。

しかも両手を左右それぞれのポケットに!

ありえない!ありえなさすぎるっって!

「あ、確かに暖かいかも?」

「井上、おまっ動かすな!」

俺は必死で井上の腕を掴んで抑え込む。

ポケットから出そうにも意外に力が入って敵わない。

逆にこっちはどんどん力が抜けていく。

「やめろって!マジで」

いやホント勘弁してください井上サン。

なんかもう本気で泣きたくなってきた…。

「おや?小銭が入ってますな?」

ごそごそと俺のポケットの中でうごめく手。

本当ヤバい!本当ヤバいって!

「た、頼むから!」

「もうちょっとだけ」

「無理!とにかく手を抜け!抜いてください井上サン!」

後半はきっと悲鳴に近かったに違いない。

井上はようやくポケットから手を抜いてくれた。

なんつーかスゲェ屈辱なんですけど。

息も絶え絶えに真っ赤な顔をしている自分が見なくても想像つく。

あぁ…情けねぇ。
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