Novel 1st

□怪しい笑顔にご用心
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「いいか…あんま無茶すんな、お前が華原に抱えられて保健室に入って来た時はさすがのオレ様も焦ったぞ」

「えぇっ…華原くんが?」

「さっさと教室に戻らせたけどな」

後でお礼を言わなくちゃ。

ふと私重くなかったかなとか考えとしまう。

「…頼むから倒れるのはオレ様の前だけにしてくれ」

先生が真面目な顔で言うから

そんなにも心配させてしまったのかと思うとチクッと胸が痛んだ。

「先生、心配かけてごめんね」

毛布から手を出して先生の手を握った。

やっぱり冷たい手。

だけど心は本当暖かいね。

「まぁ心配したのもあるけどな、オレ様が特に気に入らないのはお前が誰かに抱きかかえられたって事だ」

先生の空いている手が私の髪を撫で、顔が近付く。

「せ、先生?」

「お前に触れて良いのも、お前を抱きしめて良いのもオレ様だけなんだよ」

…えっとそれってもしかしてヤキモチですか?

「・・・何笑ってんだよ」

珍しく先生が拗ねた様な顔をする。

「だって・・・先生がヤキモチ妬くなんてなんか嬉しくて」

思わず顔がにやけちゃう。

「当然だろ?お前はオレ様のもんなんだからな」

フッと笑って先生がおでこにキスをする。

先生の言葉と柔らかな温もりにドキドキして思わず目をつぶった。

ふわりと漂うタバコの香り。

なんだか顔が火照ってくる。

「ヒトミ」

呼ばれて目を開けると先生の顔はまだそこにあって至近距離で見つめ合う。

「先生…」

「そんな目で見んなよ…我慢出来なくなるだろ?」

が、我慢って!

「それとも、本格的にオレ様の物になりたいってか?」

「ま、まだいいです!」

慌てて首を振ると先生は起き上がって楽しそうにわらった。

「真っ赤になって…本当ヒトミはおもしろいな」

「〜〜〜先生、私で遊ばないで下さいよ」

「いいんだよ、可愛くてやってんだから」

ヨシヨシと先生に頭を撫でられた。

もぉ…いつもからかうんだから。

なんだか悔しい。

まだ先生と繋いだままの手を引っ張って身を起こすとそのまま先生の唇に口づけた。

「なっ」

先生がびっくりして目を見開いてる。

してやったりだ。

「先生も、可愛いですよ」

ニコッと笑う私に先生はハッと我に返る。

「へぇ〜?」

「な、なんですか」

「やるようになったじゃねぇか、ヒトミちゃんよ」

「あ、あれ?今のはちょっとふざけてみただけで・・・その・・・」

「不意打ちたぁ、なかなか上出来だぜ?」

先生が満面の笑みを浮かべる。

「帰ったら覚えてろよ?」

先生の楽しげな笑みがなぜか恐ろしく見えたのはたぶん気のせいじゃない…。



end


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