Novel 1st

□時には強気で
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階段を駆け上がると濡れた上履きが勢いよく滑る。

「わきゃっ」

「あぶねっ」

とっさに支えてくれたのは同じクラスの学園ナンバー2の華原くん。

「あれぇ?ヒトミ先輩…どうしたのその格好!」

学園ナンバー3の颯大くんも一緒でしたか、しかし彼らに理由は言えないよ。

「華原くんありがとう。ごめんね急いでるから!」

心の中でも謝りつつ目的地へ向かう。

ゴールはすぐそこだ。


ガラッ!!

勢いよく美術室のドアを開けると2〜3人の女の子がいた。

私の顔を見るとヤバイとばかりに逃げだす。

「ちょっと!待ちなさいよ!」

逃げるくらいならあんなことするなってのよ!

逃げる女の子達を必死に追い掛けて階段もめんどくさいとばかりに飛び降りる。

上履きが滑って体勢を崩さなければすぐに追いつけたのに。

「キャー!」

追い迫る私の迫力に犯人一味は悲鳴を上げる。

ちょっとこっちが悪者みたいじゃない!

ついに裏庭まで来てしまった。

「もう、逃げられないんじゃない?」

息を切らして私が声をかけると彼女達が振り向いた。

「それはそっちかもね」

真ん中のショートヘアの子が言い返してくる。

「私に言いたい事があるなら直接言ったら」

こっちだって怒り心頭なんだから負けてられない。

「よくも水かけてくれたわね、おかげでびしょ濡れなんだけど」

「頭を冷やせってことよ、ちょうどいいじゃない」

なによそれ!腹立つ〜!

「あなた目障りなのよ」

「そうそうナンバーズに纏わり付いてさちょっと馴れ馴れしいんじゃない」

「ちやほやされていい気になってるんじゃないの?」

次々に言ってくれる。

でもちょっと待って、私がいつちやほやされたのよ、最初なんか割とひどい扱いだったのに。

むしろ一ノ瀬さんには壁とか障害物扱いだったんですけど。

なんかだんだんゲンナリしてくる。

「はぁ・・・あなたたちこそやる事がこそくなんじゃない?」

「なんですって」

「だいたいね私に当たるのはお門違いだと思うけど?それで誰かが振り向いてくれるわけじゃないでしょ」

「…言ってくれるじゃない、こっちはあの人たちに近付く事も出来ないってのに」

「あんたなんか、ただの大家の娘ってだけのクセに!」


「そうだ」

背後から聞こえた鋭い声に振り返るとそこには一ノ瀬先輩がいた。

「桜川はただの大家の娘で、だからどうこうって訳じゃない」

言いながら歩いてきて私の隣に立つ。

「一ノ瀬先輩なんでここに…」

「あれだけ大騒ぎすれば誰でも気付く」

「それにヒトミちゃんが関わってるとなるとほっとけないしね」

「かっ神城先輩まで!」

二人の登場に驚いて私の怒りは吹っ飛んでしまった。

でも、この状況はマズイんじゃないだろうか?

彼女たちにとって。
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