Novel 1st
□時には強気で
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時には強気で・・・たまには怒っていいと思うよ。
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バシャッ
お昼休みに中庭でご飯を食べようと向かっていた時、今日は雲一つない晴天なのに私は何故か水浸しになっていた。
見上げればクスクス声と共に顔を引っ込める女の子たち。
「ちょっとヒトミ、大丈夫!?」
一緒に歩いてた優ちゃんと梨恵ちゃんが慌ててかけよってくる。
全っ然大丈夫じゃないよ。
「今の子達ナンバーズのファンクラブの子じゃない?サイテーね」
「これは着替えないとダメかもねぇ」
なんかもう…2人の声が耳に入ってこない。
「ヒトミ?」
だって私は今怒りにうち震えてるから。
そう学園ナンバーズこと人気ナンバー5の五人が春に私のお父さんが建てたマンションに越して来てきてからというもの、同じマンションに住んでるってだけで妬みや嫌がらせを受けてきたけど…いつも仕方ないって思ってきたけど。
でもこれはさすがに我慢の限界も超えるってもんでしょ!
「もうキレた…絶対捕まえてやる!」
梨恵ちゃんに持ってたお弁当を強引に渡す。
「ちょっと、ヒトミ!」
親友二人の制止を振り切って私は走り出した。
後に2人はその時の私は目の色を変えて別人の様だったと言う。
私は校舎に飛び込んだ。
水をかけるのに身を乗り出してたから顔はバッチリ見えた。
向こうはきっと私が来るなんて思ってないからまだあの教室にいるかも知れない。
あそこは確か美術室だっけ。
だいたい水ひっかけるってどうなのよ。
まだ夏とは言え9月ももうすぐ終わり、こちとらダイエットで脂肪が半減してるってのに風邪でもひかす気?
まったく悔しいけどレトロな嫌がらせなわりに効果大だわ。
見つけたらどうしてやろうかしら。
この際相手が3年だろうが2年だろうが1年だろうが容赦しないんだから!
はらわたが煮え繰り返っていろんな事が思考を巡る。
「桜川っ」
突如呼ばれてハッと振り向けば白い布が被さってくる。
「わっ何?」
新手の嫌がらせ?
でもこの声は…
「若月先生っ?」
「ふぅ…先回りして正解だったな。お前のクラスメートが慌てて知らせに来たんだよ」
きっと優ちゃんたちだ。
「よく私がわかりましたね?」
「あぁもしかしたら愛の力ってヤツか?」
「…先生、ちょっと私急いでるんですけど」
苦笑しながら言いつつも今は先生の冗談なんかに付き合ってらんないと気持ちが焦る。
「まぁまて、そんな格好で走り回るんじゃねぇよ、とりあえずそれでも着とけ?」
「白衣?」
「びしょ濡れでシャツが透けてんだよ、それくらい気付け」
まだ夏服なのでシャツ一枚なのを忘れてた。
思わず顔が赤くなる。
「あ、ありがとうございます」
「犯人、捕まえんだろ?オレ様も手伝うか?」
犯人って先生・・・。
「ううん、これは私に売られた喧嘩だから」
「わかった。頑張れよ?」
「はいっ」
私はすぐさま走りだした。
「いいねぇ強気な女は悪くないぜ?」
私の後ろ姿に先生がそんな事を呟いたとも知らずに。