僕の記憶の扉
□第三章
1ページ/13ページ
一、夏の日
暑い。
ミーンミンミンミンミーーーン
セミが鳴いている。・・・・・・。
ミーーン ミーンミーンミーーーーーーン
・・・・・・。
「あぁ、もう、うるさいっ!」
ただでさえ暑いのに、セミの声を聞くだけで気温が五度ぐらいあがる(気がする。)!
今日から八月。夏本番。・・・扇風機とクーラーが恋しくなる季節だ。俺の部屋にはない・・・。
俺の名前は風唯。この暑い夏を乗り越えようとしている中学二年生。
ミーンミンミンミンミーーーン
またセミが鳴いている。今度は十度ぐらい上がりそうだ。
「うるさい、うるさいうるさーーーい!」
ミンミンミンミンミンミンミンミーーーーーーーーーンッ!
「うるさーーーーーーーーーいっ!」
はぁはぁはぁ・・・。疲れる。そのまま布団の上に倒れこむ。
このときにはもう気づいていた。セミの声に混じってほかの音が聞こえていることを。
◇ ◇ ◇
あの音はあれからずっと聞こえている。しかも、どんどん大きくなっていっているような気がする。
それにしても、不思議だ。この音を聞くと懐かしさがこみ上げてくる。なぜだろう。何の音か聞こうとしても、まだ小さすぎてわからない。それにこの音は、俺にしか聞こえていない。母さんや父さんに聞いても何も聞こえないと言われる。
なぜ俺にしか聞こえないのか。もしかしたら、これは誰かからの‘メッセージ‘かもしれない。
八月も一週間が過ぎたある日―――。