僕の記憶の扉
□エピローグ
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二、記す。
『何とかまとまったけど、次に何を書くか悩むな。やっぱり、あの少年―――輝夜風唯のことかな。結局もう彼が私の目の前に現れることはなかった。あの闇の中から抜けだして以来声も聞こえない。
でも、私の中に彼はいる。確信はないけど、私にはわかる。その証拠に、昨日もあの子にちゃんと謝れたし、もう生きていることに疲れたなんて思わない。彼が、勇気をくれたから。
それに、ラフラも言っていた。風唯は別の世界の人間だって。パラレルワールド―――平行世界というものがあって、それは同じ時、同じ場所に存在する世界。けれど、その世界の住人が互いに気づく事はないし、知りさえしない。それを知っているのは、時の番人であるラフラだけ。でも、私は風唯に会えた。別の世界の自分に。そして、大切なことを知った。それは、二人で一人、一人で二人≠セということ。
これぐらいでいいかな。 二〇XX年 二月 十一日 記』
ノートを閉じ立ち上がった少女の胸には深い緑色の石でできたペンダントが揺れていた。
その緑色は、少年の瞳の色と――――――。
「これでいいんだよね・・・・・・。これで、終わったんだよね・・・・・・。」
今までいた世界をもう一度振り返って前へと進んでいく。
もう二度と戻ることのないように。
もう二度と思い出さなくてすむように。
熱いものが込み上げる。目の奥が熱くなる。それが、零れ落ちないように、歯を食いしばって。
そして、月日を経て―――。
◇ ◇ ◇
そしてもう二度と戻らなかった。
もう二度と思い出さなかった。