一柳和受難シリーズ

□この願いはきっと届かない
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※この話は『そんな優しい声で愛してるなんて言わないで』の続き物です。そちらを読まれていないと分からない事が多々あります。






 突然、辺りに機械的な音が響いた。
 その音の出所は日織が膝枕をしている和のポケットだった。

 寝ている和を起こそうか…と日織が悩んでいるうちに、和は少し呻いてゆっくりと体を起こした。

 日織の方は見ずに和は今だ鳴り止まない携帯をポケットから出し、携帯を開けて表示された名前に溜息を少し吐いてボタンを押した。

和:「もしもし、ねえちゃ《和!今すぐ帰ってきなさい!!》…一体何があったの…?」
雛:《うるさい、姉が『帰ってきてお願い!』って言ったら飛んで帰ってくるのが弟ってもんでしょ!》
和:「何それ!?大体お願いじゃなくて命令だし、理由も分からないのに納得なんてできる訳ないよ…」
雛:《ちっ、和のくせに生意気ゆうな!》
和:「ええっ!和のくせにって酷いよ姉ちゃん!!」
雛:《はぁ、たくしかたがないわね…。》
和:「…それはこっちが言いたいy《何か?》…いえ、何でもないです。」
雛:《分かればよろしい。》

 和はいつまで経っても姉に適わない自分に泣きたくなった。

和:「そういえば姉ちゃん、今日は友達の家にお泊まりに行くんだって言ってなかった?」
雛:《そーなのよ!急にドタキャンされたのっ!!あいつ、彼氏が来るからって。》
和:「…それでそんなに機嫌が悪いんだ。」
雛:《あたりまえでしょ!!とにかく、今日は飲み明かすつもりだからアンタ付き合いなさい。》
和:「なっ…!付き合いなさいって僕が飲めるわk《そんなの分かってるわよっ!私を誰だと思ってんの!》…すみません。」
雛:《アンタは私の隣で酒注いだりつまみ買って来たりグチ聞かされたりしてりゃいいのっ!》
和:「…横暴だ…。」
雛:《何とでも言いなさい。今から30分以内に帰ってくること、いいわね!》

 『ガチャンッ』という音がして通話が切れる。

和:「30分なんて無理に決まってるだろ…。」

 ホントに泣きそうになっている和に日織は苦笑いで話しかけた。

日織:「まぁまぁ、とにかく一刻も早く着くために家に帰りやしょうや。」
和:「うっ、うん…。」
日織:「和さん…?」
和:「いや、何でもない。」

 「いこっか。」と言って立ち上がる和は、日織を見ることは無かった。




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