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□二十億分の一の鼓動
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髪に絡む指。
首筋を擽る、頬の感触。
甘えるような仕草に、また愛しさが込み上げて。
伝わる鼓動の早さに、小さく笑みが零れた。
二十億分の一の鼓動
ザックスに想いを告げて、早三ヶ月。
愛と呼ぶには幼い感情。
恋と呼ぶには深い感情。
誰よりも、側に居たかった。
誰よりも、一番に。
言葉を濁してそう言えば、笑って、ザックスは言ってくれた。
俺は、セフィロスが好きだと、そう。
「な、セフィロス」
掛けられた声に、ゆっくりと体を離す。
玄関先での抱擁。
この所、任務続きであまりザックスと触れ合う時間が持てなかったせいだろうか。
家に帰ってすぐ、ザックスは抱き付いてきた。
寂しかったのかと問えば、当たり前だと呟いた。
「俺、セフィロスと一緒に居て、すごい楽しい」
「…いきなり、どうした」
「いーや、何となく」
心底幸せそうな笑みを浮かべるザックス。
くしゃりと髪を撫でてやれば、嬉しそうに、微笑んだ。
「リビングに行かないか?ここじゃあ、落ち着かないだろう」
「ん、わかった」
するりと、離れた腕。
靴を脱ぐ、ほんの短い間であるのに。
それにすら寂しさを覚えるのは、錯覚か。
気のせいだと振り払い、頬にかかる髪を掻き上げた。