for

□二十億分の一の鼓動
3ページ/3ページ






「俺、馬鹿だからさ、言ってくれないとわかんないんだよ」

「…何を」

「俺、セフィロスのこと、大好きだ。すごい好き、ほんとに」



耳にかかる吐息。
回された腕のあたたかさ。



「何回言っても足りないんだ…好きって言うしかできなくて、でも、俺…」

「…わかった、わかったよ」



必死な様子のザックスに、笑みが零れる。
ザックスも、同じだったんだ。
どうすれば想いを伝えられるのか、わからずに。
体いっぱいで表現して、何度も何度も言葉を紡いで。
それでも足りないと、そう思ってしまうのだ。



「俺も、同じだ」

「セフィロス?」

「…俺も、どうすればお前に伝えられるのかわからずに、いつも悩んでいるんだ」



伝える術を持たない俺は、それを手探りで探し続けて。
届かない呟きを、夜の闇に溶かしていた。
けれど、ザックスは。



「俺たち、似たもの同士だな」

「…そうだな」



たった一つの言葉。
それに、全ての想いを託して。
体いっぱいで表現することで、きっと伝わると信じて。
ザックスは、笑うのだ。



「俺も、お前に倣ってみるかな」

「ん?」

「ザックス」



頬を撫でれば、擽ったそうに笑う表情。
落とした口付けに、少しだけ赤らんだ頬。



「好きだ、ザックス…誰よりも、お前がいちばんに」



思いの丈は、言葉で全て表せるものじゃないとはわかっている。
それでも、ザックスのように、想いを告げ続ければ、その一端でもザックスに伝えることができるだろう。
ザックスが、そうしてくれているように。



「…うん。俺も、大好きだよ」



高鳴る鼓動。
定められた二十億回。
そのひとつひとつを、ザックスと感じていられたなら。
それ以上に幸福なことは、きっと。



「…何も、ないな」



呟いた声に、ザックスは首を傾げていたけれど。
もう一度口づけを落とせば、幸せそうに、微笑んだ。










End...







++++++++++++

羅彌さま、遅くなりまして申し訳ございません…!orz
恋愛初心者な二人ということで、「お互いにすごく好きなんだけど、うまく気持ちを伝えられない二人」に挑戦して、撃沈しました(何でそんなものにチャレンジしたんだ
下品じゃないセフィロス視点な話がこんなに難しいなんて思いませんでした(失礼にもほどがあるよ!
いつでも書き直し&返品受け付けますので!
それでは、改めまして、相互ありがとうございました!



前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ