キリ番

□Be Mine
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『アンジール!?どうしよう、ヤバイ!』

「どうした」

『とにかくヤバイんだって!支給ポッドからマテリア取ろうとしたらさ、中の変な穴に落としちゃって、すっげー音してるんだよ!』



携帯を少し離して、わかった、というように何度か頷いてみせるアンジール。
スピーカーから漏れる音は、確かに、精密機械からしてはいけない類の音だ。
どうせ、また他所事を考えながらの行動だったんだろう。
相変わらずのトラブルメーカーだ、と可笑しくてまた笑った。



「わかった、今から向かう。…おとなしく、そこに居ろ」



そう言って、通話を切った。
溜息をひとつ吐いて、アンジールは振り返る。



「すまないな、急用だ」

「あぁ、全部聞こえてた」



冷めた紅茶を飲み干して、かたり、と小さく音を立ててカップを置く。
傍らに置かれた、四葉のクローバー。
アンジールが今朝、部屋の植物の手入れをしていた時に見つけたのだと、摘んで持ってきたものだ。



「埋め合わせは、また」

「別に、構わないさ」



指先で、小さな葉に触れる。
ミッドガルの土では、育たない植物。
外から仕入れた土壌の上でだけ、鉄の大地に緑は芽吹く。



「今度、バノーラでよく食べていたアレを作ってやる」



幼い頃の話。
同じ年頃のジェネシスとアンジールは、よく二人で遊んでいた。
ジェネシスの家は大地主で、その家に入るのをアンジールは躊躇った。
小腹が空いては、村の林檎畑に走って行き、木陰に隠れて二人、分け合った。
貧しいアンジールの家に遊びに行った時、出されたアップルパイ。
母の手製だと、得意げに笑っていた。



「焼けるのか?」

「母ほど上手くはないがな」



言いながら、椅子を引いて席を立つ。
子犬の世話をしに行くのだろう。
ひらひらと手を振って、見送る。



「アンジール」



背凭れに背を預けたまま、棚に置かれた林檎を指差す。



「次に実家からアレが届いたら、改良版、作ってやろうか」



にっと笑い、腕を組み直す。
幼馴染は、決してジェネシスの家の林檎をもぎ取ろうとはしなかった。
それは、彼の誇りに関わるものなのだろう。
それを口にしてほしかったけれど、差し出すことは、彼の誇りを踏み躙ることになる。
いつも、背中に隠していた。
林檎の果実を、差し出せずに。



「……頼む」



笑いながら、そう言って。
部屋を後にしたアンジールの背を見送りながら、何度か瞬きを繰り返す。
焼くと言っていたパイの礼にならば、飲んでくれるかと計算してはいたけれど。
こうも簡単に、承諾の言葉が聞けるとは思わなかった。
椅子の上に脚を上げ、ジェネシスは小さく溜息を吐く。
改良の余地は確かにあるとは思うが、深く考えたことまではなかった。
商品にしているのだから、あの当時よりも味は良くなっているだろう。
それを越えるものを、作ってやりたい。
何よりも、夢のひとつが叶うのだから。
確か、棚のどこかにバノーラ・ホワイトに関する本があったはずだ。
薄い冊子だったが、無いよりは役に立つだろう。
多忙な日々の中、約束などは有って無いようなものだけれど。
いつか、旨いと笑ってくれるその日のために。
ふわり。
窓から流れる風に、四つの葉が、揺れた。






















差し出せずにいた、白い果実。
ずっと背中に隠していた。
両手を前に捧げれば、君は笑ってくれるだろうか。
その手に載せるは、約束の。











 End...





+++++++++

ごごっごーごゴメンなさい…orz(普通に謝ってください
幻覚蜜柑様、大変お待たせしました…!
アンジェネ大好きなのにアンジェネじゃなくなった気がしますorz
ツンツンしてない…!何かG様がデレデレしてるの気のせいか…!?(気のせいじゃないよ
四つ葉のクローバーの花言葉は「私のものになって」と「望みが叶う」らしいです。
アンジールがこっそり告白してるんです…!(G様気付いて無いよ!意味ないよ!
遅くなった上にこんな文で申し訳無いですorz
いつでも返品&書き直し受け付けますので…!
それでは、素敵なリクエストありがとうございましたv


2008.5.9





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